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ワークマン「平均年収1000万円射程に」人を増やさず事業広げる秘密

 チェーン全店売上高が2000億円を超えても、経営企画部門は2人、情報システム部門は4人。ワークマンは事業が拡大しても、仕事が増えたからと安易に人を増やさず、まず不要な業務をなくしてきた。その先に掲げるのが、10数年前は500万円台だった社員の平均年収を1000万円超の水準へと引き上げることだ。生成AIによる事務作業の省力化や、人手不足に対応する法人FCの拡大など、成長を支える「しない経営」の現在地を、土屋哲雄専務に聞いた。
(中略)
 ——無駄な仕事に人を使わない、 ワークマンの「しない経営」の考え方ですね。土屋専務がいま目標にしていることは何でしょうか。
 社員の平均年収を1000万円にすることです。私が入社したころ(2012年)は社員の平均年収は588万円でしたが、今期は約840万円になる予定です。毎年5.3%を昇給しており、増収減益の時期は苦しかったのですが、昇給率は変えませんでした。このまま行けばあと2、3年で1000万円に届くと思います。
——小売業の平均年収と比べてずっと高いですね。社員勤続年数11.6年も小売業の中では長く、人が辞めない会社でもあります。年収面の影響もあるのかもしれないですね。
 ここ3年間でも退職者はほとんどいませんでした。辞めるほうが珍しいんですよ。
(Japan Innovation Review 8月19日)

ワークマンの「しない経営」で注目すべきなのは、人を増やさないことではない。売上げが増えれば仕事も増え、人手が足りなければ採用するという、企業成長の常識そのものを疑っていることだ。チェーン全店売上高が2000億円を超えても、経営企画2人、情報システム4人という数字は、少人数経営の自慢ではない。仕事を増やさなければ、人も増やさずに済むという、逆向きの経営思想を具体化した数字なのである。
その結果として生まれた余力を、社員の処遇に振り向ける。平均年収は2012年の588万円から今期約840万円へ上昇し、毎年5.3%の昇給を続けている。
見逃せないのは、たんなる「高給企業」の話ではないことだ。企業では売り上げが増えれば仕事も増え、人が足りなければ採用する、という循環が当然のように繰り返される。ワークマンは、その因果関係を逆転させている。売り上げが増えたから人を増やすのではなく、売り上げが増えても仕事を増やさない。その差が、社員1人当たりに配分できる利益を変える。
しかも3年間ほとんど退職者がいないという事実は、給与がたんなる人件費ではなく、組織の安定を生む投資になっている可能性を示す。人手不足だから賃金を上げるのではなく、不要な仕事を消して生産性を高め、その果実を賃金に戻す。ここに「しない経営」の本当の意味がある。
AIによる省力化も、この延長で考えるべきだろう。AIで人を減らすのではなく、AIによって「人がやらなくてよい仕事」を増やし、その結果として生まれた余力を、賃金や仕事の質にどう戻すか。問われるのは仕事の新陳代謝である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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