2026/08/12

新卒採用支援やHR事業を提供するリーディングマーク(東京都港区)は、4~7月に就職活動を実施している旧帝大早慶層を対象とした「就職人気企業ランキング」を発表した。その結果、人気企業ランキングのトップは前年と同じく「三菱商事」だった。
2位以下は「伊藤忠商事」「三井物産」「住友商事」「丸紅」が続いた。前年と比べると、伊藤忠商事と三井物産の順位が入れ替わったものの、トップ5の顔ぶれは前年と同じ5社だった。
前年と比較すると、「三菱地所」(8位→6位)や「三菱UFJ銀行」(13位→10位)などが順位を上げた一方、「野村総合研究所」(9位→11位)、「PwCコンサルティング合同会社」(16位→24位)、「アクセンチュア」(19位→29位)などのコンサルは順位を落とした。 志望する業界のトップは「総合商社」(35.1%)。次いで「コンサルティング・シンクタンク」(19.4%)、「食品」(16.5%)、「不動産」(15.7%)が続いた。
30歳時点での希望年収は平均946万円と、前年(895万円)から51万円増加。1000万円以上を希望する学生の割合も43.3%となり、前年(38.8%)から4.5ポイント増加した。
キャリアのゴールとして最も多かったのは「安定の実現」(44.2%)。以下「スペシャリスト」(43.0%)、「ワークライフバランス」(40.5%)、「リーダー・マネージャー」(36.3%)、「奉仕・社会貢献」(32.7%)、「自立と独立」(32.1%)が続いた。(ITmedia ビジネスオンライン 7月31日)
このランキングほど、今日の日本の企業社会が若者に何を教えているかを露骨に示すものはない。三菱商事を頂点に、伊藤忠、三井、住友、丸紅が並ぶ。これは単なる人気企業の序列ではない。巨大企業の傘の下に入ることが、人生の不確実性から身を守る最も確実な方法だという認識の表明である。「寄らば大樹の影」という就職先選択の基準は、昭和の時代から脈々と受け継がれている。
30歳で946万円、1000万円以上を望む者が43.3%。数字だけを見れば強欲に映るが、若者の欲望の肥大として片づけられない。問題は、これほどの所得を得なければ「安定」が手に入らないと、若者が感じている社会のほうにある。キャリアのゴールとして「安定」を挙げる者が44.2%に達することは、その証左だろう。
かつて企業は、個人に給与以上のものを与えた。仕事を通じて社会と結びつき、自分の生涯を組織の歴史の一部として生きるという感覚があった。しかし今日、企業は社員に帰属意識を求めながら、同時に人間を市場価値という尺度で測る。若者が企業を選ぶとき、企業への忠誠よりも、企業から得られる保障を計算するのは当然なのである。
コンサルティング人気の後退も象徴的だ。変革を請け負う者よりも、巨大な既成組織の内部に安定を求める者が増えたのである。そこには、変革や成長という言葉を信じ続けることへの疲労がある。若者が夢を失ったのではない。夢を語る社会の側が、夢の代価を個人に負わせるようになったのである。
このランキングは、若者の意識調査である以上に、企業社会の老いを映す鏡である。
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