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なぜテルモではCFOがCIOを兼務するのか?

160以上の国と地域で事業を展開し、海外売り上げが8割を占める医療機器メーカーのテルモ。経営基盤の強化に向けて、経理・財務業務の統合・標準化や、経営管理機能の高度化、IT組織のグローバル化に着手した。事業のさらなるグローバル化が進む中、経営の意思決定をどのように迅速化していくのか。その道筋について、最高財務責任者(CFO)と最高情報責任者(CIO)を兼務する萩本仁氏に話を聞いた。
 ――萩本さんは2024年4月よりCFOとCIOを兼務しています。兼務することで、経営にどんな変化がありましたか。
萩本仁氏(以下、敬称略) 大きなメリットとして実感しているのは、意思決定の迅速化です。事業環境が目まぐるしく変化し、複雑化する中で、財務戦略とIT戦略の両面を統合的に判断できることは、持続的な企業成長において非常に重要だと考えています。私は前職のソニーグループでもゲーム事業のCFOとIT部門の責任者を兼務しており、その経験が現在のマネジメントにも生きています。
 具体的なメリットが発揮された事例として、生成AIの全社導入が挙げられます。当社では、CEO自らが「生成AIを活用していく」という強いメッセージを発信し、2025年度を「テルモ生成AI元年」として積極的な取り組みを開始しました。
(Japan Innovation Review 7月29日)

グローバルな経済の地平において、企業がみずからの輪郭を保ちながら変容し続けることは、宿命的な課題である。テルモという大企業が、CFOとCIOの兼務という構造改革へ踏み出したことは、たんなる組織の効率化という水準を超え、現代経営の核心を突く試みだ。財務とITの融合は、もはや手段ではない。それは、複雑怪奇な市場環境を切り拓くための、不可欠な経営の背骨である。
かつて組織は、分業という名の機能不全に陥り、意思決定のスピードを犠牲にしてきた。しかし、海外売上高が8割を占める現在、情報の遅延は後退に向かわせる。萩本仁氏が体現する兼務の意義は、分断された視座を統合し、数字の裏側にある「技術の息吹」を戦略へ直結させる点にある。生成AIへの全社的なシフトは、トップダウンの意思表示を、即座に実務へと浸透させるための極めて合理的かつ冷徹な戦術だ。
しかし、真の局面はこれから訪れる。システムや業務の標準化は静的な安定をもたらすが、医療という極めて厳格かつ人間的な領域において、技術がどれほど加速しようとも、生命を預かるという本質は微塵も揺るがない。財務的な規律とITによる革新、この二項対立をいかに超克し、価値創造へと昇華させるか。
テルモが企図しているのは、たんなる部門の統合ではない。経営者が抱く理想の灯火を、財務の冷徹な数値とITの爆発的な速度によって、いかにして現場の血肉へと転換させるかという、意思の再構築である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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