Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

星野リゾート代表・星野佳路が語る“経営者が消える組織のつくり方

「会社は自分の子どもではない」。創業112年、4代目経営者として星野リゾートを国内有数のホテル運営会社へ成長させた星野佳路氏は、そう言い切る。多くの創業者やオーナー経営者が、自らの存在感を会社の強さと重ね合わせる一方で、星野氏が目指すのは、その逆だ。
(中略)
――オーナー経営者の中には、「会社は自分の子どもだ」と表現して、なかなか手放さない人もいます。
星野 私はそう思ったことはないですね。基本的には、あんまり仕事が好きじゃないんだと思うんです。 僕はこれまで集客を担当してきましたが、集客し続けることの大変さは一番に理解しているつもりですし、お金の面も大変でした。ですから、それをずっとやりたいなんて全く思わないですね。 会社は自分のものでも、子どもでもない。経営者として評価されるのは、「自分がいなくても競争力が残る組織をつくれたかどうか」です。逆に、私がいなければ会社が成り立たないのであれば、それは経営者として失敗だと思います。
――「カリスマ経営者」であり続けることには、興味がない。
星野 ないですね。私が集客を担当し続ける会社では、次の世代は育ちません。だから私は、個人の能力ではなく、会社の仕組みとして集客できる体制をつくってきました。 ブランドも、予約システムも、そのために整備してきたんです。
(集英社オンライン 7月24日)

「会社は自分の子どもではない」。この一句に、経営という営為の覚悟が凝縮されている。創業112年、4代目を継いだ星野佳路氏は、多くの創業者や同族経営者が陥りがちな、自己と組織の同一化という甘美な幻想を決然と退ける。
星野氏が語るのは愛着ではなく設計である。集客という仕事の困難さを骨身に染みて知るからこそ、個人の才覚や勘に依存する経営を疑い、ブランドと予約システムという「仕組み」へと昇華させた。ここに評価の基準が示される――自分がいなくても競争力が残る組織を作れたかどうか。逆に、自分がいなければ会社が立ち行かないのなら、それは経営者としての敗北だという断言は、カリスマ待望論への痛烈な批判でもある。
所有と経営を混同し、企業を私物のごとく抱え込む経営者への回答である。4代にわたる時間の重みを背負いながら、なお属人性を排そうとする意志。これこそが、112年という歳月を越えてなお会社を存続させ得る、真の継承の姿というべきだろう。カリスマではなく、仕組みを遺す者こそが、真の経営者なのである。
日本の同族企業の多くが後継者難に喘ぐなかで、星野氏の姿勢は異彩を放つ。血縁ではなく仕組みによる継承は、経営という行為を私情から解き放ち、公共の器として鍛え直す試みに他ならない。112年の暖簾を守るとは、過去への忠誠ではなく、未来への設計図を描き続けることなのだと、星野氏の言葉は教えている。
経営者の値打ちは、去った後にこそ証明される。星野氏の哲学は、その真理を突きつけている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。