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高齢者の求職が過去最多、4月は12万8003件 背景に年金の伸び悩み

職を求める高齢者が増えている。65歳以上の新規求職申込件数は4月に前年同月比で3.9%増の12万8003件と過去最多になった。物価上昇が続くなか、年金の伸びは低く抑えられており、生活費を補おうとする動きがみられる。
厚生労働省が29日発表した4月の一般職業紹介状況によると、全体の新規求職申込件数(パート含む常用)は51万7663件と1.8%増えた。65歳以上の求職が全体の4分の1を占めた。有効求人倍率は季節調整値で1.18倍と前月から変わらなかった。
例年4月は年度末の退職者が再就職に動くため、65歳以上の申し込みが増える傾向にある。厚労省の担当者は「物価高のなかで年金だけでは足りず、ダブルワークをしなければならないとの声も聞く」と話す。
(中略)
高齢者の求職が活発なだけでなく、企業側の雇用のニーズも高い。
マイナビが25年5月に実施した調査によると、直近半年間のうちに65歳以上を非正規で採用した企業の割合は44.8%に上った。今後、非正規で高齢者を採用したいと答えた企業に理由を尋ねたところ「人手不足の解消・改善につながる」が48.9%で最も多かった。
厚労省は3月に、働く意欲がある高齢者の就業機会を拡大するための基本方針を発表した。
(日本経済新聞 5月29日)

全求職者の4分の1を65歳以上が占めるという事実は、高齢者の就労意欲の高まりを示す一方で、その背景にある経済的な圧力を無視しては読み解けない数字でもある。
政策立案者はマクロ経済スライドを「持続可能性」と呼ぶが、実態はどうか。総務省の消費者物価指数は2022年以降、おおむね2〜3%台の上昇を続け、食料品や光熱費に至っては5%を超える局面もあった。
その一方で、年金額の実質的な目減りは着実に進んでいる。厚労省担当者自身が「年金だけでは足りず、ダブルワークをしなければならない」との声を認めるとき、それはシステムの限界の自白に他ならない。
企業側の論理もまた透けて見える。マイナビの調査によれば、直近半年で65歳以上を非正規採用した企業は44.8%に上り、今後の採用意向理由の筆頭は「人手不足の解消」(48.9%)だという。高齢者の就労意欲を社会参加と結びつける言説は美しい。しかし求人の実態が非正規・低賃金に偏るとき、そこに描かれているのは活躍ではなく、使い捨ての構図である。
さらに問わなければならないのは、就労を促す前に生活保障が十分であるかという根源的な問題だ。65歳以上が全求職者の4分の1を占める社会とは、高齢者が望んで働く社会であるが、同時に物価上昇と年金の目減りが重なる局面では、働かざるを得ない状況に置かれている人々を相当数含んでいるとみるのが妥当である。
就労支援の拡充と生活保障の充実は、車の両輪でなければならない。求職件数の最多更新をもって「活力ある超高齢社会」と評するならば、同時にその数字が映し出す生活実態の検証を怠るべきではない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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