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日産社長ら5人報酬、計13億円 25年度、赤字で一部返上

日産自動車は28日、イバン・エスピノーサ社長ら執行役5人の2025年度の報酬が計13億8600万円だったと公表した。国内外の従業員2万人の削減を柱とした経営再建策を進めていることを理由に、エスピノーサ社長が業績連動分の半額を自主返上した。株主総会の招集通知で開示した。
 個別の報酬額は明らかにしていない。日産の26年3月期の連結純損益は、世界的な販売不振に伴うリストラ費用などが響き5330億円の赤字だった。巨額赤字は2年連続。
(共同通信 5月28日)

 5330億円という赤字の数字は、たんなる会計上の記号ではない。それは2万人という人間の生活が、帳簿の片隅に吸い込まれていく現実の輪郭である。2年連続の巨額損失を抱えた企業が、執行役5人に13億8600万円を支払う——この事実の前で、まず言葉を失う。
エスピノーサ社長が業績連動分の半額を「自主返上」したと伝えられる。だが、返上の対象が半額に止まる論拠はどこにあるのか。全額ではなく、なぜ半額なのか。その境界線を、誰が、いかなる原理に基づいて引いたのか。招集通知は個別の報酬額を明かさない。開示とは、都合のよい情報のみを選別して差し出す行為であってはならない。
日本のコーポレートガバナンス改革は、2015年のコード策定以来10年を数える。しかし現実はいまなお、株主への説明責任よりも経営陣の自己裁量が優先される構造を温存している。削減される2万人の一人ひとりには家族があり、地域があり、蓄積された技術がある。その喪失を「リストラ費用」という4文字に圧縮しながら、トップの報酬を不透明なまま温存することの倫理的欺瞞を、市場も監督官庁も、これまで十分に問うてこなかった。
再建とは痛みを分かち合う意志の表明であるはずだ。しかし13億円超の報酬総額が示すのは、痛みの非対称性である。組織の腐敗は数字ではなく、沈黙の作法の中に宿る。日産の帳簿がその沈黙を雄弁に語っている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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