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ウェザーニューズはなぜ経験豊富な外部人材を積極採用したか

『眠れる人材の宝庫』(日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋。「シニアエグゼクティブ」が持つ高い能力と経験を、いかに企業の成長へとつなげるか。実践的な道筋を探る。
 気象会社のウェザーニューズが外部人材の登用を積極的に進めた理由とは?
(中略)
 同社がシニアエグゼクティブを本格的に採用し始めたのは、2017年頃のことだ。「事業が急拡大する中で、特に3つの分野で組織を強化する必要がありました」と、代表取締役会長の草開千仁氏は振り返る。
 1つ目の分野は、人事、財務、経営企画を含むコーポレート部門だ。同社はこれまで、本業である予報部門や営業部門を中心に人を配置してきた。
そのため、コーポレート部門の仕事に関する専門性や経験を備えた人材が不足がちであった。「ガバナンスや経営企画の領域を高いレベルで主導できる人材が必要でした」と草開氏は話す。
 2つ目は、IT部門だ。同社が運用している世界最大級の気象データベースの管理、気象モデルのシミュレーション、データを使いやすくアウトプットし、広くユーザーに届けるためのアプリ開発など、ITは早くから同社の事業の生命線となっている。
「市場ニーズの変化にすばやく対応できるようにするため、開発を外部委託から内製へ切り替えました。IT人材の不足が叫ばれる中で、開発を主導できる経験豊富なエンジニアが必要になりました」(草開氏)
 3つ目は、気候テックのような新規事業の開発だ。
(Japan Innovation Review 5月14日)

一人の人間が職業人生をかけて蓄えた判断力、修羅場をくぐり抜けた後にだけ身につく胆力、そして失敗の記憶から生まれる慎重さ——それらは教室でも研修室でも教えられない。ベテラン層の中途採用で問われているのは、その「時間の結晶」をいかに活かすか、という一点に尽きる。
ウェザーニューズが2017年頃から本格化させたシニアエグゼクティブの登用は、一見すると人材不足への対処に映る。コーポレート部門のガバナンス強化、IT内製化の推進、気候テックという新領域への進出。三つの課題はそれぞれ独立しているように見えて、じつは一本の軸で貫かれている。すなわち、「経験の非代替性」という命題だ。
日本の労働市場において、45歳以上の管理職経験者が抱える深刻な雇用ミスマッチは統計が雄弁に語る。パーソル総合研究所の調査では、大企業における50代ミドル・シニア層の「働きがい喪失」率はじつに4割を超える。能力は枯渇していない。消耗しているのは、能力を展開する場の欠如である。
草開氏の言葉——「ガバナンスや経営企画の領域を高いレベルで主導できる人材が必要」——の核心は、「高いレベル」という修飾語にある。新卒採用と育成では間に合わない速度で事業が膨張するとき、企業は時間を外部から購入する以外にない。シニアエグゼクティブとは、他社が20年かけて鍛えた時間の化石である。それを「眠れる」と形容する著者の比喩は的確だ。眠っているのは人材ではなく、人材を覚醒させていない側に起因する。
ウェザーニューズは、中途採用者と既存社員をともに覚醒させたという。文化の異なる組織に他社の年輪は根付くか、というベテラン層の採用が直面する問いへの答えは、すでに成果となって現われている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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