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スーパーホテル、初任給30万円、全社員対象に大幅な賃金体系改定

スーパーホテル(大阪府大阪市)は、社員満足度の向上と健康的なライフスタイルの実現を軸とした賃金体系の見直しを2026年4月より実施する。今回の改定では、ホテル業界における従来の給与水準を打破して全産業・全業種の中でもトップ20%水準(当社調べ)となる初任給30万円(総合職)を設定し、一般社員から執行役員に至るまでのベースアップを行なう
ホテル業界では他業種と比較して給与水準が課題とされてきた。賃金体系の見直しを通じて、「人材への投資が企業価値を高める」という考えを実践し、ホテル業界で新たなスタンダードの確立をめざす。
 賃金改定の見直しにともない、若手から管理職まで各ステージに応じた活躍を支援するため、ふたつの手当を新設する。ひとつは総合職を対象に業績連動手当月額2万5000円。
組織の成果を社員全員で分かち合うことで、パフォーマンス向上への意識を高める。もうひとつは若者応援手当で、月額 5000円 ~ 2万5000円。若手社員を対象に年齢に応じて段階的に支給し、若手社員が経済的な基盤を確保しながら自己研鑽に励み、早期に自律して会社の中核として活躍することを応援する。
(スーパーホテル作成ニュースリリースを要約 4月22日)

ホテル業が「おもてなし」を標榜しながら、その担い手を疲弊させてきたという矛盾は、数字が雄弁に語る。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、宿泊業・飲食サービス業の平均月収は25万9500円で、全産業で最も低い水準にある。全産業平均との差は6万円を超える。さらに国税庁「令和4年民間給与実態統計調査」では、宿泊業・飲食サービス業の平均給与は268万2000円で、全業種平均457万6000円を大きく下回っている。
美しい言葉と粗末な報酬の乖離——これはホテル業界の表と裏の二面性といって差し支えない。
スーパーホテルが2026年4月より実施する初任給30万円(総合職)への引き上げと全職位ベースアップは、この二面性に正面から向き合う試みである。新卒採用における業界の初任給は20万円から21万円としている施設が多い現状に照らせば、この数字はたんなる改定ではなく、業界のパラダイムへの挑戦だ。業績連動手当や若者応援手当の新設も、人材を消耗品として扱ってきた慣行への決別を示している。
だが、問いはここからはじまる。「人材への投資が企業価値を高める」という命題は正しいか。正しいとして、それはいかなる論理の上に立つのか。厚労省|令和4年雇用動向調査」によれば宿泊業・飲食サービス業の離職率は26.8%で、全産業平均の15%を大きく上回る。離職のコストは採用・育成費、サービス品質の劣化、顧客満足度の低下として経営に跳ね返る。
問題は、この試みが業界標準を本当に動かすかどうかだ。スーパーホテルの先進性は称賛に値するが、構造的な低賃金が業界全体に根を張る以上、孤立した改革は人材の流入先となりながら、競合他社が後に続くとは限らない。スーパーホテルの「新たなスタンダードの確立」という志が低賃金の土壌を変えるのは、それが波紋となって業界横断的な賃金底上げへの連帯を生み、ホテル業界全体に広がるときである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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