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正社員の4割以上が「静かな退職」マイナビ調査

マイナビは、20~59歳の正社員男女と企業の中途採用担当者を対象に実施した「正社員の静かな退職※1に関する調査2026年(2025年実績)」の結果を発表した。
調査の結果、正社員の4割以上が「静かな退職」をしており、前年より2.2ポイント増え、20代・30代では約半数が実施していることが分かった。さらに全年代の7割以上が「静かな退職を今後も続けたい」、約3割は「働いている間はずっと続けたい」と回答した。
静かな退職が増えている背景には、約4割の企業に「異動や転勤は会社の指示が強い」傾向がみられることから、外発的な要因で不本意な静かな退職が起こっている可能性もある。
企業の中途採用担当者の4割以上は「静かな退職」に賛成した。賛成意見は「人それぞれ」「静かな退職のように決められたことをきっちりとこなす社員も必要」などだった。
調結果について、マイナビキャリアリサーチラボの朝比奈あかり研究員は次のようにコメントする。
「静かな退職には外的な要因が影響しているケースもあり、“不本意な”形で選択している人がいることも明らかになった。異動や評価制度など、日本型雇用を前提とした仕組みが残る中で、企業と個人の意向にズレが生じている可能性もうかがえる」
(マイナビ作成ニュースリリースを要約 4月13日)

静かな退職という名の下に可視化されたのは、怠惰ではなく、日本型雇用の老朽化である。正社員の46.7%が静かな退職を実践し、その7割超が「今後も続けたい」と答えるとき、これは一過性の流行ではなく、雇用制度への静かな不信任決議だ。
異動や転勤、キャリアパスの決定において「個人の希望」12.4%に対し「会社の指示」41.9%という数字は、主体性を掲げながらも、なお社員を「配置可能な駒」とみなす視線の根強さを露呈している。
マイナビはきっかけを「不一致」「評価不満」「損得重視」「無関心」の四類型に整理するが、そこに通底するのは、組織と個人の間に横たわる「対話の不在」である。 
評価基準はなお27.6%の企業で非公開のまま、説明責任は曖昧に先送りされている。その結果としての静かな退職を、企業の4割超が「そういう社員も必要」と受け入れる姿は、むしろ諦念に近い。
興味深いのは、静かな退職が、ワークライフ・インテグレーションや「つながらない権利」といった新しい働き方の言説と、奇妙な二重写しになっている点だ。私生活と仕事の相互充足をうたう一方で、現場では「これ以上は関わらない」という防衛線として静かな退職が選ばれている。
この道を選ぶ社員は会社を去らずに、いわば会社から精神だけを亡命させている。その亡命を「多様な価値観」として称揚するだけなら、企業はみずからの責任を免れるだろう。しかし不本意な静かな退職が増えるとき、それは組織が人間の時間と感情を正当に評価できていないという、きわめて危うい徴候である。
問われているのは、異動・評価・説明の回路を見直し、静かな退職を選ばなくても生き延びられる職場を設計し直せるかどうかだ。その作業を怠る企業こそ、じつは産業界を静かに退職しつつある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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