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「人が集まる企業」が排する「日本的雇用の悪しき慣習」

正社員の人手不足を感じる企業は51.6%となり、4年連続で半数超を記録した――帝国データバンクが2025年10月に行った調査では、日本企業が抱える「人が集まらない」という慢性的な課題が浮き彫りになっている。自社を「人が集まる企業」にするためには、どのような取り組みが必要なのか――。そのための打ち手について、日本企業が当たり前のように行使してきた「ある権利」を手放すことが必要だと語るのは、2025年9月に著書『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』(光文社)を出版した法政大学教授の石山恒貴氏だ。日本企業が取り組む人事施策にみられる課題、見直すべき人事制度の原則論について同氏に聞いた。
(中略)
 ──著書では、本人同意原則を実践している企業として、カゴメや富士通を挙げています。それぞれどのような取り組みをしているのでしょうか。
石山 カゴメでは基本として、管理職への登用を「挙手制」で行っています。会社が一方的に任命するのではなく、「自分が管理職になります」と手を挙げてもらう形式を取っているのです。
 なにごとにおいても本人の意思や自発性を必要とせずに、一方的に命ずるという仕組みが問題だと考えます。組織としては楽なように見えますが、結果としてエンゲージメントの低い組織が誕生してしまいます。手間をかけて組織と個人が対話ですり合わせを行うからこそ、組織全体で前向きな取り組みが生まれやすくなります。
(Japan Innovation Review 1月27日)

 本人同意人事のなかには社長の公選制もある。テンポスホールディングスは2013年に社長立候補制を導入し、同年7月、テンポスバスターズの西日本・東海エリアマネージャーだった平野忍氏が、3代目社長に就任した。
 同社が4年ごとに実施する代表取締役社長の公選制「社長の椅子争奪戦」で、立候補者各自が提出した経営計画などにもとづいて数度にわたる審査を経て平野氏が選ばれ、定時株主総会を経て社長就任が決まったのである。
 14年に平野氏を取材する機会があり、株主総会や社内での反応を尋ねたところ、こう話してくれた。
「前社長が取締役として私をサポートしてくれるという安心感もあって、株主総会で私の社長就任を非常に温かい目で見てくれた」
「社長の人選には既定の路線があるのだろうと思っていた社員も、私が社長になったことで、実績を上げて頑張れば誰にでも社長になれるチャンスがあると思えるようになったようだ」
 社長公選制の根底にあるのは創業者・森下篤史氏の人材観だという。「自分の人生は自分でつくる」「何事も他のせいにしない」。このシンプルな考えが社長就任への門戸を等しく開放し、平野氏の社長就任はそれを証明した。
 同社は社長公選制のほかにも、勤務地・職種を自分で選ぶ「フリーエージェント制度」、
いっしょに働きたい人を選ぶ「ドラフト制度」、新部署・新店舗の立ち上げ時に新規役職者を募集する「役職者立候補制度」など、さまざまな本人同意人事を実施している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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