2025/12/22

デンソーの人事部が掲げるビジョン「PROGRESS」。自動車業界が大きな変革期にある中、社員と組織の在り方を再定義し、双方に新たな価値をもたらすことを目指すという。その実現に向けて、積極的に活用を進めるのが生成AIだ。デンソーでは人事部門と生成AIの協働をどう進めているのか。同社人事部部長の中岡周平氏が登壇したJapan Innovation Review主催セミナーでの講演の内容より、取り組みを紹介する。
(中略)
同社では、特に若手社員(主に事務系・技術系の新入社員)の育成とキャリア支援の部分が大きく変わった。従来と比べ、若者の価値観は多様化しており、キャリアに関する考え方も一様ではない。こうした世代にいかに活躍してもらうか、いかに会社に定着してもらうか、が重要になっている。
基本はOJTとOff-JTの組み合わせだ。従来のOJTでは、主に配属後の職場の上司が育成や支援を行っていた。現在は、先輩やメンター、上長など、多面的に支援するアプローチを取っている。
Off-JTについては、3年かけて段階的に行う。従来の最長半年程度と比べ、長期間にわたる。半年ごとに成長度合いや困りごとを定点観測し、繰り返し面談を行う中で「『キャリアは会社が与えるものではなく、自ら選び取るもの』といった意識変容を促しています」と中岡氏は話す。
このOff-JTの取り組みを支えるのが、生成AIを活用したキャリア支援レポートだ。社員がキャリアに関する独自アンケートに回答すると、生成AIがその内容を分析。十数種類の該当タイプを判定した上で、その社員のタイプに合った成長アクションを自動的に提案する。それを人事担当者が確認し、有意義なものを提案するという仕組みである。
(Japan Innovation Review 12月11日)
デンソーは「実現力のプロフェッショナル集団」をめざし、「人と組織のビジョン&アクションPROGRESS」を2021年に策定し、「自立・自律のキャリア」実現に向け、キャリアデザイン研修やリカレント教育、社内公募など、さまざまなキャリア実現支援施策の充実を図っている。
たとえば現地人材の育成登用では、デンソーグループ全体で共有すべき価値観・信念を示した「デンソースピリット」(2004年制定)に基づき、仕事を行うための基礎的な考え方・ツール・プロセスをまとめた「デンソーでの仕事の進め方」と部下育成の考え方やプロセスをまとめた「On the Job Development」 をグローバル共通教育として全世界で使用している。
グローバル共通は人事制度も同様である。個人の発揮能力にフォーカスした世界共通の等級「グローバル職能資格」 を導入し、同じ基準で評価することで、世界中の人材がグローバル全体のなかでキャリアを描けるようにしている。
若手技能者の育成もPROGRESSの特徴である。1954年の開設した「技能者養成所」の伝統を受け継ぐ「デンソー工業学園」(工業高校・高等専門課程)を運営して、国内グループのほか、一部の仕入先の技能者育成も支援している。
生成AIを活用したキャリア支援レポートも、PROGRESSによる人材育成インフラが整備されているからこそ有効に活用できるのだろう。AIは魔法ではない。活用できるベースの強弱が肝心だ。
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