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稲盛アカデミー特任教授が振り返る、希代の経営者・稲盛和夫の「企業変革」

1982年、小出版社の倒産で職を失った筆者の下に届いた一通の電報、差出人は京セラだった。応募の記憶もないまま訪問すると、創業者・稲盛和夫氏の意向で面接が手配されていた。困窮する若者に手を差し伸べた稲盛の「利他の精神」は、社内にも息づいていた。なぜ厳しさの中に心地よさがあったのか。筆者の実体験から探る。
(中略)
中途入社者の多くは、最初京セラ独特の文化に衝撃を受けるが、カルチャーショックを克服できた者は、臆することなく活躍することができた。どこの馬の骨かも知れないよそ者を信頼し、仕事を任せてくれる。純血主義が叫ばれることなく、入社年や最終学歴が問われたりすることもなかった。これも、稲盛がつくりあげた変革を生む組織風土であろう。
 創業以来、絶えざる成長発展を通じ、組織の拡大、事業の多角化を果たしてきた稲盛は、変容する業容に合わせ、多彩な人材を外に求めてきた。その際、選考基準はあくまでも人物本位とし、型にはまらない形での人材採用や登用を行ってきた。それら多種多様な外部人材が、京セラに常に変化をもたらし続けた。
(Japan Innovation Review 11月20日)

 京セラの文化を培った経営哲学「京セラフィロソフィ」は広く知られている。その一端が解説されている「稲盛和夫OFFICIALSITE」によると、フィロソフィは「人間として何が正しいのか」「人間は何のために生きるのか」 という根本的な問いに真正面から向かい合い、京セラを今日まで発展させた経営哲学である。
フィロソフィは4つの要素で構成されている。一つめは「会社の規範となるべき規則、約束事」、二つめは「企業が目指すべき目的、目標を達成するために必要な考え方」、三つめ「企業にすばらしい社格を与える」。これは、世界中から「さすが立派な社格を備えた会社だ」と信頼と尊敬を得るための考え方を示している。
これらの3要素に加えて、フィロソフィにはそれらのベースとなる四つめの要素が「人間としての正しい生き方、あるべき姿」である。
 さらに稲盛氏は愛と誠と調和に言及している。
「人を成功に導くものは、愛と誠と調和という言葉であらわされる心です。こうした心は、私たち人間がもともと魂のレベルでもっているもので、愛とは他人の喜びを自分の喜びとする心であり、誠とは世のため人のためになることを思う心、そして調和とは自分だけでなくまわりの人々みんなが常に幸せに生きることを願う心です」
 中途採用でも京セラフィロソフィにフィットすれば力を発揮できたというが、このフィロソフィには普遍性がある。「我が社の常識=社会の非常識」という通弊に陥らない内容だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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