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なぜ強い企業は「一部の優秀な社員」に頼らないのか? 個人の知恵を組織の力に変える楽天の「脱属人化」実践法

楽天で店舗系システム開発部長として、急成長を支えた著者が執筆した『楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA-S』(福永博臣著/日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集。社員と組織の能力を同時に伸ばしていくための「成長を再現する仕組み」を探る。
(中略)
企業の成長には、社員一人ひとりのスキル向上が不可欠です。しかし、個々の社員が独自に試行錯誤しながら成長するには時間がかかります。効率的に成長を促すためには、「うまく行ったことを学び、再現する」仕組みが必要です。
「学ぶ」という言葉は、古くは「まねぶ」と言い、「真似る」ことだと言われています。望む結果を出している人の方法を学び、真似することは、最も速く成長する方法の一つです。
 これは仕事でも同じことで、成果を出している優秀な社員の「成果を生み出す違いは何か」を言語化することで、その他の社員がそれを真似し成長することができるようになります。個々の社員がゼロから学ぶよりも無駄なくスキルを習得することができるのです。
例えば、営業の現場では、成績の良い社員が、商談前に行っていること、商談中のプロセス、商談後のフォローアップなどを分析して言語化します。他の社員が行っていないことがあれば、皆が同じようにできるように仕組み化しましょう。
(Japan Innovation Review 11月14日)

 業務の属人化を克服する手段として普及した仕組化は、職場全体のスキルの底上げには一定の成果を出すが、依然として個人差は残る仕組化は業務品質の最低基準に過ぎず、優秀な成果を出す社員は仕組化を超えた手法を実践するため、なお属人化は解消されない。
 しかしAIを導入すればこの限界を突破できるのではないのか。全社員をAI人材に変身させる企業も現われているが、AI活用にも属人化という課題が出てきた。
AI要件定義「Acsim(アクシム)」を提供するROUTE06(東京都千代田区)が上場SIer・ITベンダー企業の部長職相当の325名を対象に実施した調査によると、要件定義の課題は、1位「未経験者への難しさ」、2位「品質のばらつき」、3位「手戻り発生/ドキュメント作成の手間」だった。要件定義の課題発生要因の約6割は「担当者の経験・スキルへの依存」で、9割以上が自社の要件定義における「属人化」を実感していることがわかった。
 この結果について、ROUTE06の松本均取締役はこう指摘する。
「要件定義を個人のスキルではなく、組織として再現可能なプロセスとしてとらええ直す必要性を示している。とくに現状把握から課題提起、そしてソリューション検討の難しさが際立ち、要件定義の最初の一歩こそが最大のボトルネックと考えられる」
 要件定義に特化したAIツールには何が期待されているのか。松本氏によると、現場が期待しているのは「思考プロセスのガイド」「抜け漏れの検知」「ナレッジの継承」などより本質的な支援だという。どこまで進めば属人化は解消されるのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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