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みずほFG・CHROが明かす中央集権型の人事を捨てた理由

みずほフィナンシャルグループ(FG)は2024年度から、新人事制度「かなで」をグループ主要5社で本格稼働させた。従来の中央集権型人事を改め、社員一人一人の意志を起点にキャリア形成を支援する狙いだ。背景には2021年のシステム障害で揺らいだ組織の再生という課題もあるという。みずほFGはどのような人事施策を施し、現場はどう変わってきたのか。グループCHRO(最高人事責任者)の人見誠氏に聞いた。
(中略)
人見 端的にいうと、銀行にルーツを持つみずほグループは、日本流のメンバーシップ型人事を最たる形で構築・運用してきた歴史があります。つまり、人事サイドが人事を決定し、ビジネスも社員もそれに従う、という中央集権的な運用を長年続けてきました。
(中略)
人見 まず、グループ内にどれだけ多様な仕事やキャリアパスがあるのかを一覧化し、社員に開示する取り組みを推進しました。社員が自らキャリアを考えるには、まずは「選択肢を知る」ことが不可欠だからです。
 その中でもユニークなのが、社員のアイデアで生まれた「キャリアトーク」です。これは「自分の仕事について話せます」と登録した社員がグループ内に約700名おり、話を聞きたい社員がエントリーすると、オンラインで30分間、仕事内容を直接聞くことができる仕組みです。(Japan Innovation Review 11月28日)

 みずほフィナンシャルグループが運用する新人事制度「かなで」の骨子は「戦略人事」と「社員ナラティブ(物語)」の2つ。ホームページに新人事制度「による変化が、会社視点と社員視点で報告されているので、その要旨を紹介する。
みずほフィナンシャルグループの人事は、新卒一括採用、画一的な処遇、年次や経験年数による昇進・登用など伝統的な方式で運用されてきたが、全社人事による人員管理は育成・異動・配置に効率的というメリットがあった。近年の事業の拡大に対応する人材確保に不都合が生じていたため、新人事制度に移行して事業を遂行するビジネス部門が人事の主導する体制に切り替えた。
新人事制度のもとでは、役割に応じた役割給の導入、内部人材の登用、外部人材の採用などを進めて、質と量を考慮した人材ポートフォリオの構築に取り組んでいる。
 一方、新人事制度は社員には何が期待できるのだろうか。
 新卒一括採用の時代にはキャリアに対して受け身の社員も多く、成長意欲にも濃淡があった。ジョブ公募などの手上げ制度が導入されていたものの、利用者が一部に限定され、広がりに欠けていた。
 新人事制度の導入によって、こうした通弊が解消に向かっている。年次や経験年数によらない登用や、募集のない職種に挑戦できる「ジョブチャレンジ」の新設などで社員が主体的にキャリアを形成できる環境が整った。その結果、「ジョブチャレンジ」と会社が募集する職務に応募する「ジョブ公募」を合わせた2024年度の応募者数は1772人。前年度比1.5倍に達した。
 中央集権型人事から分散型人事への移行だが、これは社会の各界で進む構造変化に符合している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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