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「後継者不在」年々上昇し62.60%に 代表者が高齢の企業ほど上昇

経営者の高齢化が問題になるなか、後継者不在の企業の割合が上昇している。2025年「後継者不在率」は62.60%で、前年の62.15%から0.45ポイント上昇した。
 代表者年齢が60代の企業では49.10%と約半数に達し、80代以上でも24.97%にのぼる。80代以上は前年比1.01ポイント上昇しており、増加が顕著だ。
 代表者が高齢で、後継者が不在の場合、新規の人材採用や長期の事業計画に基づく設備投資に踏み切れず、大胆な事業転換も難しい。生産性が向上しにくい側面もあり、物価高や金利の上昇局面では、利益を確保しにくい。事業承継が進まないことによるサプライチェーンや地場経済の消失が叫ばれて久しいが、不在率の上昇と外部環境の変化は、こうした悲観的シナリオが目前に迫っていることを物語る。
 後継者不在率は、調査を開始した2019年は55.61%だった。その後も、2020年57.53%、2021年58.62%、2022年59.90%、2023年61.09%、2024年62.15%と毎年、上昇を続けている。
 後継者(候補含む)がいない場合、事業譲渡やM&Aが有力な選択肢になる。官民挙げた事業承継への取り組みで第三者承継は以前よりハードルが下がっている。しかし、M&Aは多額の金額が動き、様々な思惑が絡み合う取引の場となりトラブルも少なくない。
(東京商工リサーチ 11月10日)

 中小企業の場合、多くはオーナー社長にノウハウと人脈が一元化しているため、社長を交代して後継体制が発足しても、軌道に乗るまで5年は要するといわれている。加えて取引銀行に経営者保証が求められれば、後継者の資産状況がネックとなり、たとえ有能な幹部がいても親族以外の承継を阻んでいる。
 この窮状を打開するために、一定の要件を満たせば経営者保証を外す動きが進んでいる。中小企業庁によると①資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている②財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である③金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている――この3要件の一部を満たせば、経営者保証なしで融資を受けられる可能性や、すでに提供している経営者保証を見直せる可能性がある。
 東京商工リサーチは「非上場の中小企業では、ゴーイングコンサーン(事業継続)を望まない代表者も少なくないが、高齢になってもなお、事業を続けないといけない背景に目を向けることも必要だろう」と指摘するが、自分の代で廃業と決めている社長は、体力が持つうちは経営をつづけている。事業承継をしないことは従業員も取引先も理解しているので、事業承継問題に取り扱う必要はない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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