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美容で高齢者のQOLを支える「ケアビューティスト」が増加中 4年で13倍

「介護×美容」の人材育成を行なうミライプロジェクト(東京都渋谷区)が運営する高齢者向け美容のプロを育成するスクール「介護美容研究所」では、介護と美容の専門知識を融合したカリキュラムを全国で展開し、ケアビューティストの育成を推進している。卒業生には、看護師・介護士のスキルを広げるほか、一般職からのキャリアチェンジ、子育てや介護を経験した主婦層など多様なバックグラウンドを持つ人材が、高齢者向け美容の専門家として活躍中である
 介護分野では高齢者のQOL(生活の質)向上の必要性が高まる一方で、「介護職の人材不足」「業務負担の増加」などが深刻化する今、“美容を通してケアに参加できる人材”が対策として期待されている。
 総務省によると、日本の高齢者(65歳以上)人口の割合は2025年9月時点で29.4%と過去最高を記録。なかでも、高齢者の生活支援ニーズの拡大や介護保険制度の限界から、“保険外サービス”として心のケアを含む付加価値型介護への注目が高まっている。
とくに美容領域では、心身の活性効果や自尊心の回復などの側面が評価され、導入する介護施設は4年前から約13倍に増加している(ミライプロジェクト調べ)。
(ミライプロジェクト作成ニュースリリースを要約 11月10日)

MBAを取得して大企業勤務を経て介護美容で独立した30代の女性がいる。この女性は
大手企業での営業職を経て「自分でビジネスを立ち上げたい」と考えて介護美容研究所で学び、卒業後に「介護美容 YN」を起業した。現在は訪問美容のほかに、SNSを活用して介護美容を仕事にしたい人を対象にしたオンラインサロンも開講している。
これまでに延べ150名以上の相談に応え、訪問契約施設は15施設を超えた。業務が増えて自分ひとりでの対応が困難になったことから、オンラインサロンのメンバーに業務を依頼するチーム運営へと体制を変えた。自らのスキルを活かしながら、他者の活躍も支える「次世代型ケアビューティスト」の先駆けとなっているという。
サービス提供先である介護施設は訪問美容をどう受け止めているのだろうか。
SOMPOケアの「ラヴィーレ大宮弐番館」では、認知症を持ち、不安定な気分とネガティブな発言が続いていた入所者が訪問美容を利用した。
ミライプロジェクトの報告によると、ケアビューティストによるネイルケアとハンドトリートメントを受けた日、その入所者に小さな変化が生まれた。入所者は施術中からだんだんと前向きな気持ちになり、笑顔になっていった。施術後は施設職員に「見て!これだけきれいになったよ!」と見せに来るまでに気分が明るくなり、以降は、周囲とのコミュ ニケーションも少しずつ増えたという。
訪問美容は介護保険が適用されない自費サービスだが、需要が増えていくのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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