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介護離職防げ、東京海上日動が社員に20万円 仕事との両立後押し

東京海上日動火災保険は介護が必要と認定された親族を持つ社員に、ケアサービスなどの費用として20万円を支給する。早期の介護支援を促し、仕事との両立に悩む社員の離職を防ぐ。企業が介護に必要な費用を一時金として社員に支給するのは珍しい。
管理職にあたる中高年が仕事と介護の両立に直面していることが背景にある。両立が難しくなれば生産性の低下や離職につながる。経済産業省は2030年時点で介護をしながら仕事をする人が約318万人に上がり、経済損失は約9兆円になると試算する。
厚生労働省も育児・介護休業法を改正し、4月から企業に対して介護と仕事の両立を支援するための研修制度や相談体制を整備することを義務づけた。介護に悩み離職する社員を減らす取り組みが今後広がる可能性がある。
東京海上日動は「要介護1」以上と認定された親族がいる社員を対象に、10月から申請を受け付け、11月の給与にあわせて支給する。金額は要介護1にかかる介護サービスの自己負担額にあわせた。1月に実施した調査では、同社社員の約1割が介護に直面にしているという。
(日本経済新聞 10月19日)

東京海上日動火災保険は仕事と介護の両立を目的に、勤務時間の柔軟化、時間単位で の有給休暇、個別相談窓口の設置、ビジネスケアラー同士の交流の場の提供、さらには「育児・ 介護の疑似体験プログラム」の導入などに取り組んできた。
さらに2025年1月に全社員を対象に実施した「介護従事実態調査」の結果、 回答者の約8%がすでにビジネスケアラーであり、約45%が今後5年以内に介護に直面する可能性があることが明らかになった。
 この結果を踏まえて、同社は介護態勢構築応援金として、同一対象親族1名につき1 回限り20万円を支給する以外に「ライフサポート休暇」を導入する。
これまで同社は、年間5日を上限とする時間単位の介護休暇制度を設けてきた。ライフサポート休暇は、介護・育児・疾病を対象に年間5日を上限とする時間単位で取得可能な有給休暇制度である。社員は介護を理由に、年間最大10日間まで時間単位での休暇を取得できる。
同社は「本制度により、突発的な介護への迅速な対応と介護支援態勢の一層の充実を図っていく」という。同社が実施する介護態勢構築応援金の支給を契機に、社会保障サービス費という新たな費用負担が、ごく普通のあり方になってゆくではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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