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「100回失敗する覚悟のある人材が必要」塩野義製薬

塩野義製薬が独自の人的資本経営を本格化させている。製薬業界が転換期を迎え、従来型の製薬モデルだけでは成長が難しいという危機感から、ビジネスモデルの転換を担う新たな人材の確保と育成を目指す。同社が進めている人事施策について人事部長の河本高歩氏に聞いた。
(中略)
──具体的にはどのような施策を取り入れていますか。
河本 まずは、キャリア採用の強化を含む採用戦略の見直しです。キャリア採用は、これまで社内になかった専門人材を直接獲得できる重要な手段と位置付けています。従来のキャリア採用は年間十数名程度でしたが、2024年度には約5倍となる68名まで拡大しました。
 一方で、キャリア採用だけに偏ってしまえば、企業の将来性や人材の成長機会が損なわれ、年齢構成も不均衡となり、持続的な成長が難しくなるでしょう。そのため、引き続き新卒採用によってポテンシャル人材を迎え入れ、キャリア採用と組み合わせてバランス良く育成していく方針を取っています。
 加えて20年ぶりに特別早期退職プログラムを実施しました。人件費削減のためではなく、当社のビジョンを目指していく上で、皆さんにキャリアを再検討してもらった結果、300人程度の方が応募されました。同じ思いで働く従業員の集団になるために必要なものだったと思っています。
(Japan Innovation Review 10月17日)

塩野義製薬の「統合報告書 2025」に示されている人材像は「他者を惹きつける強みを持ち、貪欲に知識とスキルを高めつつ、 積極的に挑戦しやり遂げる人」。細分化すると、グローバルに活躍できる人材、 ヘルスケアニーズを捉えて継続的かつ効率的に医薬品を創出し続けることができる人材、多様性を活かしてチームでヘルスケアイノベーションを企画・創出・社会実装できる人材である。
2024年度はスキルレベルに基づき70人のキャリア採用とともに、従業員のスキルアセスメントを通じて個々の能力の向上も見えはじめているという。
上席執行役員コーポレート管掌・ 畑中一浩氏は「教育プログラムの充実やDE&Iを 推進するとともに、人材配置の最適化を実現する人材ポートフォリオの構築を進めていく」と方針を述べる。
人事部長・河本高歩氏は成長を支援する環境をこう語る。
「グローバル人材や高い専門性を持つ人材の育成・獲得を強化するとともに、人事制度の改定や自己投資支援制度の拡充などにより従業員が自律的に学ぶ環境づくりに注力している」
「マネジャーは面談や業務指導などを通じて傘下の従業員の成長支援を、会社は制度整備や風土醸成を含めた従業員の成長機会の提供、環境整備を行い、人的資本の強化に取り組んでいます」
 塩野義製薬の取り組みを概観すると、改めて企業が変化対応業であることがわかる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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