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8月実質賃金、8カ月連続減 パート時給50カ月連続増の1413円

厚生労働省は8日、8月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表し、物価の影響を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年同月比1.4%減り、8カ月連続のマイナスとなった。賞与(ボーナス)分の減少が影響したと見られる。
 労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額は1.5%増の30万517円で44カ月連続のプラスだった。
 一方、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が3.1%上昇し、実質賃金はマイナスとなった。
 現金給与総額のうち、基本給などの所定内給与は2.1%増の26万8202円で直近数カ月と同じ程度の伸び幅だった。賞与など特別に支払われた給与は10.5%減の1万2639円と全体を押し下げた。厚労省の担当者によると、ボーナスを支給する事業所の割合が下がっているためという。
 現金給与総額を就業形態別に見ると、フルタイムの一般労働者で1.9%増の38万5804円、アルバイトを含むパートタイム労働者で11万1635円だった。パートタイムの時給は3.7%増の1413円で、50カ月連続のプラスとなった。
(朝日新聞 10月8日)

 先の自民党総裁選で、公定価格で運営される事業に従事する職員の賃金がインフレに追いついていないので支援が必要という政策がアピールされた。この職種の賃金は経営努力だけでは上がらないが、たとえば全国一律の公定価格である診療報酬で経営される病院の場合、経営悪化が著しい。
こんなデータがある。日本病院会などが調査した全国1800以上の病院の約6割が赤字、全国自治体病院協議会が調査した自治体病院の86%が赤字――2026年4月に実施される診療報酬改定がプラス改定に至ったところで、改定率がインフレに追いつかない可能性は濃厚だ。賃上げの財源を確保できるのだろうか。
 多職種で構成される病院で最多の職種は看護師である。会員数73万人の日本看護協会は10月7日、福岡資麿厚生労働相・同省森光敬子医政局長・間隆一郎保険局長に「令和7年度補正予算において、物価高騰・賃金上昇に苦しむ医療機関等の経営 支援策を講じられたい」「令和8年度診療報酬改定における、十分な改定率を確保されたい」と要望した。
日看協の秋山智弥会長は「月額給与が上がっても、賞与の据え置きや引き下げなどにより実質的な処遇改善になっておらず、他産業との給与差も広がっている。処遇改善がなされないと 将来的な人材の確保も難しくなる」「夜勤手当は10年以上ほとんど上がっておらず、夜勤従事者を確保するためにも、夜勤従事者の処遇改善が必要だ」と訴えた。
森光医政局長は「夜勤手当がほとんど上がっていないことに驚く。診療報酬改定、補正予算ともに上げていく基調にもっていく必要がある」と応じた。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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