2025/10/08
政府・自民党は急速な人口減少と労働力不足を背景に外国人材の受け入れを推進してきた。一定のスキルを持つ外国人の在留資格「特定技能」を2019年に導入。27年には技能実習制度に代わる「育成就労」をスタートさせる。外国人労働者は24年に230万人を突破し、12年連続で過去最多を更新した。
経済再生へ訪日客(インバウンド)も重視。30年に6000万人誘致と15兆円消費を実現する目標を立てた。24年の外国人入国者数(速報値)は新型コロナウイルス禍前を上回り、過去最多の3678万人に達した。
こうした中、治安や地域社会への影響を懸念する声は根強い。アフリカと国内4市の交流を図る国際協力機構(JICA)の「ホームタウン」事業は撤回に追い込まれた。
一方で、欧米に見られる「排外主義」に対する危機感も広がる。全国知事会は「多文化共生」の立場を表明。立憲民主党や公明党も同様で、公明の斉藤鉄夫代表は「誤解に基づき不安を感じる方もいる。正確な情報提供が必要になる」と説く。
(時事通信 9月29日)
外国人政策を浮上させた震源地のひとつ、川口市のクルド人問題をかかえる埼玉県の大野元裕知事は、さる9月29日付け日本経済新聞で「埼玉県も生産年齢人口の減少が想定され、企業の人材確保は慢性的に難しくなっている。生産性を高めるため、外国人を活用したいという流れは一層進むのではないか」と見通しを述べた。
外国人問題については、感情ではなくデータにもとづく議論が必要という見解がクローズアップされている。そのとおりだが、定性的な要素も看過できない。大野氏によると、川口市の人口あたりの刑法犯の件数は、東京都新宿区や渋谷区の半数程度にとどまっている。データに治安の悪化を示す数字は現われていないが、大野氏は「それでも不安の声は届けられている。こうした声を真摯に受け止める必要がある」と指摘する。
不安を排外主義に由来する偏見とみなして切り捨てれば、不安が膨張して過剰な摩擦を誘発させか寝ない。刑事事件に至っていない諸問題も視野に入れ、施策を打つことが必須である。そのさいに「悪い部分だけを切り取ったり、良い部分だけを強調したりする議論は好ましくない」(大野氏)。外国人受け入れの推進側は「良い部分」に、抑制側は「悪い部分」にスポットを当てて、主張を組み立てる傾向が強い。
いわばイデオロギーが先行しているのだが、いずれの側も情に訴えて同調されやすく、反対側の主張に対しては攻撃に走りがちで、議論を深める姿勢に向かいにくい。
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