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女性は自己評価が低い ジェンダーバイアスで進・昇格に男女格差

世界の企業が男女格差解消に向けて動く中、日本企業はいまだ「周回遅れ」と指摘される。単純な数字の比較では測れない“真の格差”の改善のため、企業がなすべきことは何か。本稿では『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。格差温存により生じるデメリットや、変革のための知見、手法について解説する。
(中略)
 多くの企業で、社員に自分の行動やスキルを自己評価させた後、それに基づき上司が同じ尺度で評価し、続いて今後の改善のための面談が行われるというプロセスが取られている。
(中略)
 近年多くの企業が取り組んでいる社内公募制度では、女性が男性ほど自信過剰ではなく、競争を避ける傾向があり、自己評価が低く、アピール力も弱いとすると、社内公募に参加することに二の足を踏む女性も多いはずだ。
 求人情報の要件の書き方が男性を連想させる要件になっているために、女性が応募しにくい状況が生まれている可能性もある。あるいは女性の自己評価が低いために、応募に踏み切れない女性が多いかもしれない。
(Japan Innovation Review 9月24日)

 日本企業で女性の自己評価が低い問題は、学生時代に遠因があるのかもしれない。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の女性の15歳時点の科学・数学のリテラシーはOECD平均を上回っているが、日本ではSTEM分野で大学卒業生に占める女性比率が17.5%にすぎず、OECD38カ国のなかで最下位と発表された。
 STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの学問の総称である。
東京都生活文化スポーツ局が高校生を対象に調査したところ、男女の39.4%が「性別で教科の得意・不得意があると思う」と回答した。「理系科目は男性のほうが得意だと思う」は、男性19.6%、女性33.2%。「文系科目は女性のほうが得意だと思う」は、男性22.1%、女性34.6%だった。
東京都の松本明子知事はこの6月11日の会見で「日本の女子学生の理科や数学の学力は世界でもトップレベルだが、社会に出てからSTEM分野で活躍する日本人女性はまだまだ少ない」と懸念を示したうえで、その要因を2つ挙げた。
ひとつは今の女子学生にとってロールモデルが少ないこと。もうひとつは、女子学生は理系の科目が苦手という固定観念がいろいろなところにはびこり、進路選択の幅を狭めていること。
文系人材にも理数系の素養が求められている時世にあって、この問題は女性の自己評価が低いことのひとつの断面ではないだろうか。打開策として東京都は2022年から、都内在学・在住の女子中高生を対象にSTEM分野の職場を体験するオフィスツアーを実施して、女性社員との交流や、仕事を体験する機会を提供している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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