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三菱電機「人員高齢化、改革難しい」最高益下の希望退職

三菱電機が最高益が続く中で希望退職募集に踏み切る。阿部恵成最高人事責任者(CHRO)が日本経済新聞のインタビューに答え、現在進めている事業構造改革を前提に「柔軟に進めるには、明らかに高齢化が進んでいる現在の人員構成では難しい」と述べた。機器を売る従来型ビジネスからの脱却に向け、53歳以上が4分の1を占める人員構成の解消につなげる。
三菱電機は8日に53歳以上の正社員や定年後再雇用者を対象に希望退職を募集すると発表した。通常の退職支援制度を拡充し一時金を加算する特別措置などを導入する。
同社は売上高8000億円分の事案について2025年度中に撤退も視野に成長性や収益性を見極める方針を掲げている。阿部氏は「人の再配置を伴う事業変革を進めている。リスキリングや再配置だけでは間に合わない。短期施策として必要と判断した」と説明した。
希望退職は業績不振などを理由として人員の削減目標を定めることが一般的だ。今回、三菱電機は募集人員を定めない。阿部氏は「目標ありきでは納得感が得られない。応募状況は日々確認するが200人になるか500人になるかわからない」と説明した。
(日本経済新聞 9月23日)

 三菱電機が実施するシニア社員リストラとキャリアオーナーシップ経営との整合性は、社内でどう説明されたのだろうか。
三菱電機は、2023年4月に従業員一人ひとりのキャリアオーナーシップ強化に向けた会社方針の明確化を目的に、キャリア開発のコンセプト「自分を育てる、を育てる。」を策定した。
キャリアオーナーシップ経営とは、「はたらく個人の力を最大化させ、社会の力に変えていくために、企業が経営戦略、事業戦略、人財戦略をダイナミックに連携させた新人財戦略の策定と実施を通じ、キャリアや仕事を主体的に捉え、自律・自走しながら周囲と共創する人材(=キャリアオーナーシップ人材)を増やし活かすことで、個人と組織が対等な新たな関係性を構築・再構築し、個人と組織の持続的な成長を共に実現していく経営」(キャリアオーナーシップ経営AWARD 2025公式サイト)である。
同社は、パーソルキャリアが運営するキャリアオーナーシップ経営に取り組む企業を表彰するアワード「キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2025」の「大企業の部」で優秀賞を受賞した。受賞の理由についてこう述べている。
「『自分を育てる、を育てる。』」というキャリア開発コンセプトを策定し、従業員の意識改革を促すとともに、従業員一人ひとりのキャリア開発への伴走・支援を行っていることに加え、キャリア開発に資する各種制度を積極的に整備している点が評価された」
 構造改革のマイナス要因と判断されたシニア社員にとって、キャリアオーナーシップ経営に向き合うには、各制度を利用しながら在籍中に退職後の活路を固めておく以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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