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認知症社会、縮む労働力 経済損失、心血管疾患の2倍 働く介助者に負担

患者のケアに伴う社会的コストの増大が深刻だ。公式には計算できない家族の介助が大半を占め、世界一の経済大国である米国でも失われる本人や家族の労働力といった要素を合計すると年1兆ドル(約147兆円)を超える。心不全や脳卒中を指す「心血管疾患」の約2倍で、社会全体の体力を奪いつつある。
「家族と一緒に過ごすため、なんとかしたいと思った」
こう話すのは認知症の一つ、アルツハイマー病の早期段階と診断された米国の60代男性。病気の進行を抑える薬を使っている。症状が進めば介護費が膨らみ、家族や周囲への負担が増す。一人離れた暮らす必要に迫られる可能性があるだけに訴えは切実だ。
(中略)
 働きながら介護をする介助者は40~50代の管理職世代に多く、この世代の離脱は企業にとって痛手だ。企業が介護休暇を積極的に利用できる環境づくりや手厚い研修の導入を進めれば、離職を防止し自らの利益と社会的コスト抑制を両立できる可能性がある。
 介助者は社会との交流が減り、孤立すると認知症になりやすいとの指摘もある。介助者の支援が認知症患者の抑制のカギも握っている。
(日本経済新聞 9月21日)

さる9月21日は「認知症の日」、9月は「認知症月間」である。1994年に開かれた国際アルツハイマー病協会が、WHO(世界保健機関)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定し、日本でも2024年に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」で、認知症の日と認知症月間と定めた。
日本イーライリリーがMCI(軽度認知障害)およびアルツハイマー型認知症の当事者・家族(計190名)、一般生活者(1053名)を対象に調査したところ、MCIの当事者・家族(計94名)のうち、92%が「自分のことは自分でできる」または「誰かが支援すれば自立できる」と回答した。
調査を監修した神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域の古和久朋教授(同認知症予防推進センター長)は「認知症の初期段階で生活の維持が難しくなるわけではない」と指摘するが、この状態が早期診断を遠ざけているようだ。
現に、調査では、変化に気づいてから医療機関を最初に受診するまでに1年以上かかっている割合が41%を占めた。その要因につて、東京都健康長寿医療センター健康長寿イノベーションセンターの井原涼子臨床開発ユニット長はこう推察する。
「異変を感じても、年齢や疲れ、気のせいなど、 何かのせいにして、自分や周りを納得させてしまっている点が問題のコアであり、その繰り返しが、時間の経過を生んでしまう原因になっている可能性が考えられる」
 もの忘れに関する違和感を覚えたら、そのままにしないで受診することが大切だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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