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上場企業の「早期・希望退職」募集 1-8月で1万人超え 前年同期比1.4倍増

今年1月から8月31日までに判明した上場企業の「早期・希望退職」募集の対象人数が、1万人を超えた。募集の大型化が目立ち、3年ぶりに1万人を超えた2024年の年間募集人数1万9人をすでに上回った。  
募集が判明した上場企業は31社(前年同期41社)で前年同期を下回ったが、対象人数は1万108人(同7,284人)と前年同期の約1.4倍に増加した。また、業績が堅調な黒字企業が6割を占めた。  
2025年は大手メーカーなどの製造業で募集が相次いでいる。日産自動車は7月15日、経営再建計画の一環で、追浜工場での車両生産を2027年度末までに終了し、日産自動車九州への統合を発表した。グローバルで2万人の人員削減を公表しているが、国内人数は公表していない。  
また、パナソニックHDは国内外1万人(国内5,000人)の削減を進めている。ジャパンディスプレイは新たな事業戦略「BEYOND DISPLAY」を掲げ、茂原工場の閉鎖などを含む1,500人の削減を明らかにした。9月5日には国内で1,483人が募集に応募した結果を発表した。
(東京商工リサーチ 9月8日)

早期・希望退職で増えているのが黒字リストラである。上記の東京商工リサーチの調査では、早期・希望退職募集を実施した企業の直近通期最終損益(単体)は、黒字が19社(構成比61.2%)、赤字が12社(同38.7%)。黒字が6割以上を占めた。黒字企業の募集人数は7,638人で、全体の7割(同75.5%)におよんだ。
 黒字リストラはAIの普及でさらに進みそうだ。広島市に拠点を構える経営コンサルティング会社は、昨年まで採用に苦労していたが、今年に入って応募が殺到しているという。応募してくるのは20代の女性と50代の男性ホワイトカラーで、いずれの年齢層も多くが製造業出身。転職の経緯は黒字リストラによる失業が多く、コンサルティング会社社長は「業務処理のオフィスワークはどんどんAIに取って代わられていくだろう。IQだけが高い人材は生き残っていけない。生き残っていけるのは、EQが高くてAI人材を束ねることのできる人材だ」と指摘する。
そんなスーパースターなら引っ張りだこで、高額の報酬で引き抜かれるだろうから、会社側は報酬とポストなどで厚遇してゆく。給与規定の枠を超えた特別枠での処遇を行なう企業が増えるのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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