Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

先代を理解したうえで革新 リボン食品社長 筏由加子氏

1907年創業で、マーガリンや冷凍パイ生地などを製造販売するリボン食品(大阪市)を父から引き継ぎ、4代目社長に就任した。2人姉妹の次女で、もともと後継ぎになる考えはなく、米国のホテルチェーンなどに勤めていた。
一時帰国した際、父の右腕だった専務に「リボン食品には筏家の血が必要。あなたならできる」と言われた。ドライな米国のビジネス環境に慣れていた私に「血が必要」という言葉は新鮮で格好よく、父に後継者になる覚悟を伝えた。
難しい事例も多い親子間の事業承継が円滑に進んだのは、ます父の努力と忍耐があったと思う。自身で大きく育てたデザートケーキ事業の手じまいなど、私の入社前に環境を整えてくれた。専務取締役就任時に実質の経営権を渡され、役員会の前には足並みが乱れないよう2人で打ち合わせした。
受け継ぐ側の要諦は、第一に急な変化を起こさないこと。先代がやってきたことの意味を理解して尊重する。私は父の行動をじっくり観察してまねをした。くしゃみをする姿すら一緒と言われた。第二に先代の悪口が言わないことだ。
(日本経済新聞 9月1日)

事業承継は2027年12月末を過ぎると潮目が変わる。事業承継税制の特例措置が12月末に終了するからで、それまでに駆け込み承継が増えるかもしれない。
 特例措置の第一は贈与税の納税猶予制度である。後継者が贈与により取得した株式等(議決権を行使できない株式を除く)に係る贈与税の100%が猶予される。猶予の適用を受けるためには、経営承継円滑報にもとづく都道府県知事の認定を受け、原則として贈与税の申告期限から5年間は現経営者が代表者として経営にあたるなどの要件を満たす必要がある。
 事業承継後は後継者が対象株式を継続保有することが求められ、後継者の死亡など一定の場合は、猶予された贈与税が免除される。
 第二の特例措置は、相続税の納税猶予制度である。後継者が相続または遺贈によって取得した株式(議決権を行使できない株式を除く)に係る相続税の100%が猶予される。この制度の適用を受けるためには、贈与税の納税猶予制度と同様に、経営承継円滑報にもとづく都道府県知事の認定を受け、原則として贈与税の申告期限から5年間は現経営者が代表者として経営にあたるなどの要件を満たす必要がある。
事業承継後の要件も贈与税の納税猶予制度と同様だ。後継者が対象株式を継続保有することが求められ、後継者の死亡など一定の場合は、猶予された相続税が免除される。
こうした措置を受けられるのが27年12月末までなのである。経営者が高齢化している企業に対しては、会計事務所やメインバンクが判断を急がせるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。