2025/09/04
上場企業の社外取締役の報酬が増えている。2024年度の主要企業の報酬額は5年前比で25%増の1790万円で過去最高となった。企業統治や社内外をつなぐ対話の担い手として責任は重みを増し、同意なき買収などの際は価格の妥当性を判断する役割も期待される。NECなど株式報酬の導入で企業価値と報酬の連動を強める動きもある。
外資系コンサル会社のWTW(ウイリス・タワーズワトソン)が日米欧5カ国で売上高1兆円以上の448社を対象に集計した。国別の中央値は米国は前年度比5%増の4920万円、ドイツが0・4%増の3120万円、英国が6%減の2360万円だった。4%増の日本は6年連続でフランス(1%減の1520万円)を上回ったが、なお米国の半分に満たない。
これまでのご意見番、お目付け役といった立場にとどまらず、企業統治の面で社外取締役に期待される役割は拡大している。M&A(合併・買収)が一般化する中、同意なき買収を仕掛けられた場合、社外取締役が中心なる特別委員会で提案を真摯に検討することが求められる。
MBO(経営陣が参加する買収)の際も手続きや買収価格が一般株主からみて妥当かどうか、社外取締役は外部の視点で判断して意見を述べる側だ。
(日本経済新聞 8月23日)
社外取締役の報酬は常勤取締役の3割前後が相場といわれるが、常勤取締役の報酬が上がるにつれて社外取締役の報酬も上がってゆく。
傍目には見えにくいが、社外取締役の役割は重い。東京証券取引所はコーポレートガバナンスコードに独立社外取締役の役割・責務を示している。①経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと。②経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと。③会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること。④経営陣・支配株主から独立した立場で 、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること。
報酬については常勤取締役も含めてインセンティブの導入を次のように提言している。
「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブと して機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的 な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合 や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである」
経済産業省は「攻めの経営を促す役員報酬」を提言し、「株式報酬については、経営陣に株主目線での経営を促したり、中長期の業績向上インセンティブを与えるといった利点があり、その導入拡大は海外を含めた機関投資家の要望に応える」と強調している。
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