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新入社員は成果主義より年功序列に回帰?調査開始から36年で逆転

「成果主義よりも年功序列」。2025年度入社の新入社員に対する調査でこんな結果が浮かび上がった。背景に何があるのか。
学校法人「産業能率大学総合研究所」(東京都世田谷区)が今年度入社の新入社員を対象に実施した調査で、旧来の年功序列型の人事制度を望む声が成果主義を上回った。
 同研究所が1990年度から毎年実施している恒例の調査。定番の「年功序列的な人事制度と成果主義的な人事制度のどちらを望むか」という設問に対し、2025年度版の最新調査で年功序列を望むと回答したのは「年功序列」(14.6%)、「どちらかといえば年功序列」(41.7%)を合わせて56.3%。一方、成果主義を望んだのは「成果主義」(6.5%)、「どちらかといえば成果主義」(37.1%)を合わせて43.6%だった。  
選択肢が「年功序列」と「成果主義」の二者択一だった22年度までの結果を含め、「年功序列」を望む派が「成果主義」を望む派を上回り、過半数を占めるのは36回目となる今回が初めてという。 「年功序列」を望む新入社員の割合は、22年度の38.9%から徐々に上昇。24年度に48.5%で過去最高となった。25年度はさらにこの割合が高まり、記録を更新した。
(AERA DIGITAL 8月22日)

大手企業から中小企業、さらに小規模企業に至るまで年功序列から実力本位の人事への移行は、とうに検討の時期は過ぎ去った。いまはジョブ型人事や同一労働同一賃金の導入に焦点が移っている。
かりに年功序列を維持すれば人事が経営戦略に紐付かず、たとえば有能な社員が40歳に近づかないと課長職にすら就けない人事では、いかにも宝の持ち腐れになってしまう。1990年代から顕著な傾向になってきたが、30歳を前後して外資系企業やベンチャー企業に転職する流れが加速するだろう。
経済産業省は「未来人材ビジョン」(2021年)でこう指摘する。
「終身雇用や年功型賃金に代表される『日本型雇用システム』と 社外との接続領域である『採用戦略』をどうするか、である。 既に一部の企業では、相当程度変わってきた現実もあるかもしれない。 しかしまだ十分ではない。変化を、加速させる必要がある」
 年功序列への後戻りは想定できないが、そもそも新入社員が年功序列を望むのならば、会社員ではなく公務員を選べばよいのに、なぜ会社員を選んだのだろうか。その公務員も人事院が年功序列の是正を勧告し、実力主事が顕著に反映される人事への移行に向かおうとしている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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