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中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。
 45歳以上の従業員(正社員)が半数を占める企業は、全企業で6割超(64.2%)に及ぶ。逆三角形の人事構造への対応では、役職定年の導入が大企業で4割(41.0%)に達したが、中小企業は約2割(17.8%)にとどまった。大手に比べ、中小企業は中高年社員の活用を模索する姿勢がみられた。
 東京商工リサーチは6月2日~9日、「早期・希望退職」「役職定年」について調査した。早期・希望退職募集を直近3年以内に実施は、大企業が2.8%に対し中小企業は0.7%と4倍の開きがあった。
 45歳以上の正社員が半数以上を占める大企業は57.0%に対し、中小企業は64.6%にのぼり、中小企業は就職氷河期やバブル世代を含む45歳以上の比率が高かった。
 45歳以上の従業員(正社員)が半数以上を占める産業は、運輸業81.7%、金融・保険業75.0%、不動産業71.3%で特に高かった。一定の年齢に達した正社員が役職から外れる「役職定年」の導入では、大企業が41.0%、中小企業17.8%と2倍以上の開きがあった。
(東京商工リサーチ作成レポートを要約 7月9日)

 黒字リストラが話題になるのはもっぱら大手企業で、リスキリングのプログラムを導入していても、リスキリングよりも人材の入れ替えのほうが手っ取り早い。高賃金を提示すれば人材も確保できるうえで、昨今はリファラル採用という確実な採用手段も普及している。
 一方、中小企業にビジネスモデル転換にともなうリストラはほとんど見当たらない。中高年社員はたとえDX対応に難があっても貴重な戦力である。人手としてだけでなく、退職されると社内にノウハウが欠落してしまうのである。
中小企業の業務は属人的である場合が多く、退職されたら現場に支障が出てしまいがちで、通常通りに修復するまでに半年以上を要するケースもけっして珍しくない。
 退職した中高年社員の業務を引き継ぎ書にしたがって他の社員が引き継いでも、業務の勘所がわからずに右往左往してしまう。取引先との関係も属人的で、イレギュラーな対応には人間関係の蓄積が明暗を分けることが少なくなく、これまで無理を受け入れ合ったような貸し借りの関係にもとづく判断は望むべくもない。
経験則のすべてをマニュアル化することはできないのである。ただ、AIの普及でこの問題は解消されるかもしれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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