Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

企業の“奨学金代理返還”全国で10倍に拡大…新卒社員「決め手の一つになった」

少子化を背景に若手人材の獲得競争が激しくなる中、社員が学生時代に借りた奨学金の返済を肩代わりする企業が増えている。日本学生支援機構(JASSO)が設けた奨学金の「代理返還制度」は、導入から4年で利用する企業や団体が全国で10倍、九州で16倍に拡大。人材確保の「新たな手段」として注目される。支援の対象を新入社員に限らず、全社員とする動きも出てきた。
福岡市東区の地場ゼネコン「松本組」は、グループ全体で社員10人ほどの奨学金を本人に代わって返済している。このうち9割は入社3年以上の社員。社歴10年を超える中堅も含まれているという。  
代理返済の制度を導入したのは昨年4月。対象は全社員とし、同業他社からも「珍しい試み」として注目される。今年4月に入社した新卒社員にも奨学金の利用者がいて、返済が始まる半年後から会社が肩代わりを始める。返済は月額最大2万円。期間は無制限。会社に在籍していれば、最終的に完済するという。  
人事を担当する豊福博文執行役員は「新卒だけでなく、全社員を支援することで学生から『社員を大切にする企業に入りたい』と思ってもらいたい」と語る。
(西日本新聞 6月24日)

日本学生支援機構(JASSO)の発表では、2024 年10月末時点で、全国で2587社に登録が拡大して 6868 人に支援を行なっている。
奨学金代理返還制度を利用すると、企業等が直接機構に送金することで自身の通常の給与と返還額が区分され、かつ奨学金の返還であることが明確となるため、返還額に係る所得税は非課税となり得る。さらに給与として損金算入できるほか、賃上げ促進税制の対象になり得る。
東京都も奨学金返還支援事業を行なっている。対象は建設・IT・ものづくり分野の都内中小企業で、大学生等が貸与を受けている奨学金返還費用の一部を助成している。
奨学金の貸与を受けている大学生等が都内中小企業に技術者(正規雇用労働者)として就職し、1年間継続して勤務した場合、東京都と中小企業等がそれぞれ出えん金を負担。
3年間にわたり奨学金返還費用相当額の一部を東京しごと財団が奨学金貸与団体に直接支払う方法によって助成している。
さらに東京都は都内の公立学校教員や公立幼稚園教諭として2025年度以降初めて採用された職員に対して、一定期間勤務することを条件として、大学在学時に貸与を受けた奨学金の返還を支援する事業を実施している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。