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春闘で広島県中小企業の賃上げ水準は現時点で過去最高

ことしの春闘で、広島県内の中小企業の賃金の引き上げの回答・妥結水準が、過去最高となっています。
連合広島によりますと、6月6日時点の中間集計で全体の賃金水準は去年より117円低い1万7092円、賃上げ率は5・48パーセントです。
このうち、中小組合は去年より1061円増え1万2587円、賃上げ率は4・79パーセントです。6日時点の数字では集計を始めた1996年以降、最高水準となっています。
連合広島では「大手と中小企業の賃金格差は依然として残っている。取引適正化や価格転嫁など中小企業が賃上げ原資を確保できる取り組みが求められる」としています。
(中国放送 6月22日)

 中小企業の賃上げを阻害してきた価格転嫁問題が改善されてきた。中小企業庁が調査したところ、2025年3月時点の価格転嫁率は前回調査(24年9月)に比べて2・7ポイント上がって52.4%だった。コストの増額分を一部でも転嫁できた企業の割合が増加したが、従来通り「転嫁できた企業」と「できない企業」とで二極分離の状態がつづいている。
発注企業から交渉の申入れがあり、価格交渉が行われた割合が増加するなど、価格交渉できる雰囲気が更に醸成されつつあるという。価格交渉が行われた企業のうち、7割超が「労務費についても価格交渉が実施された」と回答した。価格交渉を経てコスト上昇分の全額の価格転嫁には至らなかった企業のうち、発注企業から価格転嫁について「納得できる説明があった」と回答した企業は約6割だった。
 中小企業庁は、発注企業からの申し入れは浸透しつつあるものの、引き続き、受注企業の意に反して交渉が行なわれなかった者が約1割あることを問題視。「協議に応じない一方的な価格決定の禁止を盛り込んだ中小受託取引適正化法の周知を含め、価格交渉・転嫁への更なる機運醸成が重要」と指摘している。
価格転嫁率が52.4%と半数を超えたとはいえ、いまだに半数近くが価格転嫁を実施できていない。人件費の財源を増やせていないので、賃上げ疲れは時間の問題だ。深刻な政策課題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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