2025/06/12
公益通報した報復として退職を強要されたとして、日清食品の関西工場に勤めていた大津市の男性(66)が30日、日清食品に対し、賃金や約430万円の慰謝料の支払いを求める訴訟を大津地裁に起こした。
訴状によると、男性は2018年から日清食品の工場で契約社員として勤務。工場でサービス残業が続いていることを労働基準監督署に通報したほか、熱中症の予防対策が講じられていないことや労災事故をなかったことにする慣行があることを上司に指摘したという。
男性は勤務を続ける意思を会社側に伝えたものの、退職届を書くように強要され、24年3月に退職に追い込まれたとし、「実質的に公益通報者に対する解雇であり、違法・無効だ」と訴えている。
日清食品は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。
(毎日新聞 5月30日)
日清食品の事案は、いまは提訴の段階なので事実関係は明らかでないが、公益通報者を反乱分子として人事上の不利益を強いる風潮は相変わらずのようだ。
公益通報者保護法が施行されたのは2006年。兵庫県の例を見るまでもなく、19年が経過してもなお公益通報は組織への敵対行為とみなされている。法令違反を問題視する社員は賛同するだろうが、行政機関にも民間企業にも、組織防衛を最優先するという本能が染みついている。
不祥事の処理にさいして、判断基準が法律や倫理よりも組織防衛に傾いてしまうのは組織の本能なので、おそらく改めようがないだろう。まずは隠して、隠し切れなければ矮小化し、矮小化しても乗り切れそうになければ、被害者を退職に追い込んで問題を封じ込めてしまう。公益通報はこの行動原理に反するのだ。
さる6月4日、公益通報をした人を解雇するなどした法人などに刑事罰を科す改正公益通報者保護法が参院本会議で可決、成立した。ようやく罰則規定が設けられるが、雇用側は抜け道を探すのだろうか。
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