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企業の技術流出防止へ「退職前からアクセス制限」 経産省が具体指針

経済産業省は企業が持つ技術の流出を防止するための指針をまとめる。海外の生産拠点や派遣・退職人材からの技術や情報の漏洩を防ぐため、重要技術の特定や退職予定者へのアクセス制限などの具体策を盛り込んだ。地方経産局の体制を強化し、企業の意識向上や対策強化を促す。
経産省が23日にも技術流出対策のガイダンスを公表する。従来の指針は抽象的で、実際に何をすればよいか分かりにくいとの指摘があった。事例に沿って具体的な対策や注意点を取りまとめた。
技術流出は企業の競争力を低下させるリスクがある。2020年には積水化学工業の元社員がスマートフォンの液晶画面に使う技術を中国企業に漏らす事件が発覚している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が25年3月に実施したアンケート(複数回答可)では、経済安全保障の観点で「技術流出対策」を課題に挙げた企業が3割を超えた。
指針では生産拠点の海外進出と人材を通じた流出について取り上げた。今後、資金調達や共同研究における対策辞令の追加を検討する。
(日本経済新聞 5月23日)

完璧な技術流出対策は存在せず、どれだけ対策を講じても技術流出を完全に防ぐことはできない。特に中小企業にとっては、全ての対策を講じることは、リソース面から限界がある」――経済産業省は「技術流出対策ガイダンス」(第1版)で、いきなり結論を突きつけた。この分野では、絶えずイタチゴッコが繰り返されるのである。
そのうえで、退職者に対する措置として、おもに下記を示している。①退職を申告した役職員の業務を、引継ぎ等のために必要最低限の範囲に限定し、データアクセス権限やセキュリティエリアへの入室権限を解除する②退職予定者について、直近アクセスした技術情報の内容、外部へのメール送信の履歴等を、必要に応じて数ヶ月遡り、警戒度を高めてチェックする③情報流出の予兆があれば、退職前にヒアリング等を実施する④職前に面談し、就業規則や在職中の誓約書等により退職後の秘密保持義務を課しており、違反した場合に法的措置を講じる旨を明確に説明する。
それでも、これらの関門をくぐり抜ける方法があみ出され、新手の流出方法が実行に移されるのだろう。流出させる当事者は、利を得る目的ではなく知恵比べに張り合いを見出すのだが、それだけに際限がない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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