2025/06/04
厚生労働省が22日に発表した2024年度の実質賃金は前年度から0.5%減少し、3年連続のマイナスとなった。コメなど食品を筆頭に物価上昇が続く状況で、25~29年度の5年間に1%程度の上昇を定着させる政府目標を実現できるかは中小企業の賃上げ持続が左右する。
足元で中小企業の賃上げに急ブレーキがかかりつつある。
これまで業績改善を伴わない「防衛的賃上げ」で人材のつなぎ留めをはかる中小企業が多かった。厚労省の毎月勤労統計調査によると、従業員数が30~99人の企業の場合、24年4月以降、基本給にあたる所定内給与の伸びはおおむね3%台で推移し、12月は4・03%まで上昇していた。
25年1月に2・43%に減速し、3月は0・92%に落ち込んだ。明治安田総合研究所の吉川裕也エコノミストは従業員が5~29人の小規模事業者を含め「賃上げが息切れしている」と指摘する。
同研究所は11月まで実質賃金のマイナスが続くと分析する。新たな計算方式で算出した場合は6月にプラスに転じるものの、11月まで1%を下回るとみる。
(日本経済新聞 5月23日)
連合から芳野友子会長は5月22日、総理官邸で開かれた「政労使の意見交換」で、石破茂首相に次のように要請した・
「中小組合も健闘しているものの、格差拡大に歯止めをかけるには至っていない。労務費を含む適切な価格転嫁・適正取引の取り組みも道半ば。今国会で、下請法は中小受託取引適正化法、下請振興法は受託中小企業振興法としてそれぞれ改正され、来年1月から施行される。官公需の分野も含め改正法の周知徹底をお願いする」(連合HP)
さらに「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の施策パッケージについて「『生活向上を実感できる』賃上げこそが成長戦略の要、と加筆してはどうか」と提言した。
中小企業の賃上げは、ひとつは価格転嫁がどこまで進むかにかかっている。「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」によると、中小企業庁による下請Gメン、公正取 引委員会による優越Gメンなど省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から執行・業務のノウハウの共有を行なったうえで、取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する省庁全体へと広げる。
さらに中小受託取引適正化法の実効性をより高めるため、同法違反により勧告を受けた 企業には、補助金交付や入札参加資格を停止する方策を検討する。このぐらいの措置を取らないと価格転嫁は進まない。
Talk Geniusとは-
ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。