Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

改正下請法が成立、価格転嫁促進 従業員数も基準に、名称変更

中小企業による適正な価格転嫁を促す改正下請法が16日、参院本会議で可決、成立した。  
発注者が受託事業者との価格協議を十分に行わず、一方的に支払代金を決める行為を新たに禁止。法律の適用対象となる企業を拡大するため、従来の資本金の規模に加え、従業員数を新たな基準として導入。資本金を少額にしたり、受注者に増資を求めたりすることに よる適用逃れを防ぐ。  
約20年ぶりの改正で、2026年1月1日に施行される。新たな基準では、製造委託の場合は従業員300人超の企業と300人以下の企業間の取引が、サービス委託では100人超と100人以下の取引が対象となる。  
また、下請けという言葉は、発注者と受注者の上下関係を印象付けるとして、「下請事業者」を「中小受託事業者」に、「親事業者」を「委託事業者」に変更。法律の通称名も「中小受託取引適正化法(取適法)」とした。
(時事通信 5月16日)

下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」。改正によって①対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明または情報の提供をしないことによる、一方的な代金の額の決定を禁止する②対象取引において、手形払を禁止する。また、その他の支払手段(電子記録債権やファクタリング等)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止する③対象取引に、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加する――などが規定された。
 このうち遵守されるかどうかが懸念されるのは①である。多くの場合、取引は受託側の力が弱く、取引の継続を優先させるために、たとえ理不尽な条件を突きつけられても合意を装って受け入れてしまうことが多い。
 この状況を解決するには法整備も重要だが、同時に受託側が力をつけて発注側と対等の立場で商談ができるようになることが理想だ。これは昔からの課題だが、現実には困難である。現状はトランプ関税によって受託側へのしわ寄せが進みそうで、人件費の確保に向けた価格転嫁はなかなか進まないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。