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社員の「食費補助」で実質的な「賃上げ」へ 国内3000社以上導入

物価上昇が続く中、大幅な賃上げが困難な中小企業で、社員の食費をサポートして「実質的な」賃上げにつなげようとする動きが出始めている。
全国の企業で導入が進んでいるのが、電子マネーを使った福利厚生の食費補助サービス「チケットレストラン」だ。  
企業が電子マネーとして使える専用のICカードを社員に配布し、給料日など任意のタイミングで上限7000円が自動でチャージされる。チャージ額の半分を会社が負担し、残りは社員の給与から天引きされる仕組みになっている。  
NTTドコモの電子マネー「iD(アイディ)」を使ったサービスで、全国25万店以上の飲食店やコンビニエンスストアのほか、設定すれば社員食堂でも利用できる。現在、国内3000社以上が導入し、20万人以上が利用しているという。  
サービスを展開する「エデンレッドジャパン」(東京都港区)によると、国税庁の「所得税基本通達」により業務中の食費補助は条件付きで非課税となる。このため、企業側は税負担を抑えながら社員の福利厚生を整えることできるという。
(毎日新聞 5月10日)

厚生労働省が全国の従業員5人以上の事業所3万余りを対象に実施した「毎月勤労統計調査」によると、2025年3月に基本給や残業代などをあわせた現金給与の総額は、1人当たり平均で30万8572円。前年同月比2.1%増で、39カ月連続のプラス。基本給などの所定内給与は1.3%増の26万2896円。41カ月連続のプラスだった。
 だが実質賃金は3カ月連続マイナスの2.1%減少を記録した。物価上昇に賃金の伸びが追いついでいないどころか、むしろ引き離されそうとしている勢いだ。
 物価上昇を実感しやすい支出のひとつに、毎日の昼食代がある。さる4月18日、リクルートが発表した有職者のランチに関する調査結果によると、平日のランチ費用は前年比7.3%増の485円。3年連続で上昇した。この費用には、外食、自炊、手作り弁当、コンビニエンスストアでの購入などすべての形態を含むが、どの形態でも費用が増えた。
 形態別の金額は、自炊・手作り弁当が前年比10.2%増の432円で、外食が0.6%増の1250円、コンビニなど小売店での購入は4.5%増の624円、出前・デリバリーは3.7%増の1418円だった。1カ月の支出額は、勤務日を20日と仮定すると、自炊・手作り弁当は月8640円、外食は2万5000円、小売店での購入は1万2480円、出前・デリバリーは2万8360円である。
 これだけの負担を「食事補助」でカバーできる制度はありがたいだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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