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介護人材の「アルムナイ採用」が昨年比110% ニチイ学館

ニチイ学館は、独自のデータベースを活用した過去就業者へのアプローチを強化したことにより、介護人材採用における「アルムナイ採用」の比率が、昨年比110%となった。
 当社では、従来からいったん退職した人材が戻ってくるケースが多く、介護職員全体の1割を占めていた。過去に当社で働いた経験のある人材は、当社の理念や仕事の流れを理解し、即戦力となってくれる貴重な存在である。そのためこれまでに退職者の復職を促すためのさまざまな施策を行ってきた。
 2022年からは、外部の採用MAプラットフォームを導入し、退職者だけでなく、過去に当社と接点があった人材のタレントプールを構築し、積極的かつ継続的に接触することで、就業につなげる仕組みもつくった。
 近年では、当社で働いている職員から友人など採用候補者を紹介してもらうリファラル採用※5と組み合わせて、元職員(退職者)を紹介の対象とする制度も設けるなど、複数の取り組みにより、アルムナイ採用を昨年比110%とすることがでた。
(ニチイ学館作成ニュースリリースを要約 5月16日)

 介護人材の確保が困難を極めているなかで、手数料負担を覚悟のうえで人材紹介会社に頼らざるを得ない介護事業者も少なくない。だが手数料の財源は介護報酬すなわち公費であり、それが手数料に費やされている実態にメスが入ろうとしている。
 さる4月23日に開かれた財政制度等審議会で、財務省は「介護事業者が民間の人材紹介会社を活用して人材を採用する場合、一部の事業者は高額の手数料を支払っている状況。また、人材紹介会 社経由の場合、離職率が高いとする調査もあり、安定的な職員の確保に繋がっているとは言い難い」と指摘した。
 厚生労働省が定める人材紹介の「適正認定事業者」が占める市場シェアは、医師の77.3%、看護師の81.7%、保育士の73.3%に対して介護サービスは55.7%。「適正」と認定されていない紹介会社が半数近くに及んでいる。
 この実態を踏まえれば、アルムナイ採用の強化は必然である。ニチイ学館の人財開発事業本部ダイレクター・松本裕美子氏は次のように語っている。
「アルムナイ採用は、従来から重視しており、カムバックレターの送付や当社求人サイトへの誘導などの施策に加え、カムバック制度など復帰しやすい制度設置なども行なってきた。2022年からは外部のプラットフォームを導入し退職者への接触を自動化することで、さらなる効果を狙っている」(ニチイ学館作成ニュースリリース)
 アルムナイ採用を進めるには退職者との関係づくりが重要で、専用サイトの開設など連絡を取り合いやすい手段が必要だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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