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財務省、医療機関から紹介会社への手数料負担を問題視

さる4月23日に開かれた財政制度等審議会で人材紹介会社の規制強化が取り上げられた。紹介会社に対して相応の手数料が発生して、医療機関の負担を増やすだけでない。紹介会社を経由して採用した医療従事者はおしなべて離職率が高く、入っては辞めるという事態がエンドレスに繰り返されるままでは、いたずらに社会保障財源の浪費が続くだけであると、長年にわたって問題視されてきた。
財政審で財務省は「足元で、紹介手数料の負担割合は更に増加しているとも考えられ、保険料と税金で賄われている医療機関の経営原資が必要以上に紹介手数料に流れ、更に保険料の上昇を招くことのないよう、実態を把握の上で必要な対応を図る必要がある」と強調した。
 財政審に提出された資料によると、採用者の年収に対する手数料率は平均23.4%。職種ごとの平均手数料額は、医師351万7000円、看護師76.万円、准看護師67.万9000円、看護補助者43万3000円、薬剤師115.万3000円。
常勤看護師(准看護師を含む)の新規雇用で採用 に要した1人当たりの費用(2020年度)
平均34万9000円で、採用ルート別では、紹介会社経由88万1000円、紹介会社以外10.万8000円。紹介会社を経由すると採用コストが8倍に跳ね上がっている。
(財政制度審議会資料をもとに作成 4月24日)

たとえ手数料負担が重くとも、病院は紹介会社に頼らないと、とくに看護師の採用は必要人数を満たせない。ある民間病院の副院長は、病院経営のシンポジウムで窮状を打ち明ける。
「毎日10人の看護師を紹介会社経由で採用しているが、1人あたりの紹介手数料が平均100万円なので年間で1000万円になる。ところが紹介会社経由で採用した看護師は長続きせず、1年で辞めてしまう人が多いので、毎年1000万円の手数料を払い続けている。診療報酬が財源なのに、こんな無駄な金の使い方をしてよいのかと疑問に思っている」
 別の民間病院の看護部長は、紹介会社に紹介される看護師の質を疑問視する。紹介会社のなかには、看護師出身の人材コンサルタントが登録者の適性を見極めている例もあるのではないのか。そう問うと間髪を入れず反論する。
「看護師出身の担当者が、登録人材のキャリアやスキルをきちんとアセスメントしたうえ紹介してくるのかは疑問だ。紹介される看護師の履歴書を見ると1年ごとに転職を繰り返している人が多いが、そんな人は当院に就職しても1年で辞めてしまうことは紹介会社も分かっているはずだ。当院は転職歴の多い看護師を紹介されてもお断りしている」
財政審は「ハローワークや都道府県等を介した公的人材紹介を充実させるべき」と方針を示したが、採用に至れば担当者の給与・賞与へのインセンティブを付与する紹介会社のほうが格段に勝ることは必然で、その差が埋まることは想定しがたい。現状では解決の道筋が見えない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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