Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

三菱商事、AIスキルの資格取得を管理職要件に

三菱商事は2027年度から人工知能(AI)資格の取得を管理職の昇格要件にする。データ分析や業務管理でAIを使いこなす人材を増やす狙いで、いずれは役員を含む5000人超の全社員に資格の取得を義務付ける。日本企業で社員にAIスキルを求める動きが本格化してきた。
まずは入社8~10年目ごろの課長級に昇格する時期に、日本ディープラーニング協会が運営するAI関連資格の「G(ジェネラリスト)検定」の取得を義務化する。同協会はAI研究の第一人者である松尾豊東大教授や、ディープラーニング(深層学習)を事業の核とする企業を中心に設立された一般社団法人だ。
G検定の取得者は深層学習の基礎知識を有し、深い洞察力を持ってデータ分析できる能力を持つとされる。私見ではAIに関わる数理・統計知識や法律・契約なおの知識が問われ、合格には50時間程度の勉強時間が必要とされている。
三菱商事は数年をかけて経営陣や海外出向者も含めて単体の約5400人すべての社員に同検定の取得を必須にする方向だ。
(日本経済新聞 4月29日)

 日本ディープラーニング協会のG検定で学ぶ内容の一端を紹介すると、たとえば人工知能をめぐる動向では、探索・推論、知識表現とエキスパートシステム、機械学習、ディープラーニング。ディープラーニングの概要では、活性化関数、誤差関数、正則化、誤差逆伝播法、最適化手法。法律と契約では、個人情報保護法、著作権法、特許法、不正競争防止法、独占禁止法、AI開発委託契約、AIサービス提供契約。
 理系、文系という区分けは意味をなさない。
三菱商事の2025年度における取締役のスキルマトリックスを見ると、取締役として備えるべき経験・見識・専門性の項目は「事業経営/組織運営」「リスクマネジメント」「エネルギー」「技術/イノベーション」「グローバル インテリジェンス」「人材戦略「環境・社会」と記載されている。
 このうち、技術/イノベーションの趣旨について「当社は、AI普及による産業構造・競争環境の変化をリスクと機会と捉え、既存事業の効率化、及び新たな価値創造を目指しています。その推進状況をモニタリングするために必要な、技術・イノ ベーションに関する経験・見識・専門性等を重要な項目として選定しています」と書かれている。
 いすれ取締役の全員がこの項目をクリヤしていなければならなくなるが、そのときには取締役のあり方も変わってゆくのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。