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育成就労の外国人、大都市圏で受け入れ制限 人材集中懸念で 省令案

政府は外国人技能実習に代わる新制度「育成就労」の省令・告示案をまとめた。大都市圏に人材が集中するとの懸念に対し、東京や大阪などの8都府県で地方よりも受け入れを制限し、地方からの過度な人材流出を防ぐ。2027年4月に新制度をスタートさせる方針で、28日から5月27日までパブリックコメント(意見公募)を実施する。
育成就労は、人手不足が深刻な分野で未熟練の外国人労働者を受け入れる制度。在留期間の3年で「特定技能1号」の水準まで技能を引き上げることを目指す。技能実習では職場を変える「転籍」は原則3年間は認められていないが、新制度では一定の要件を満たすと、就労から1~2年で転籍可能になる。  
案では、賃金水準の高い東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県(過疎地域の一部市町村を除く)を都市部とし、地方よりも企業の採用枠や転籍の受け入れ人数を厳しくする。  
育成就労は、採用の上限人数が企業の常勤職員数に応じて決まるが、優良な企業は都市部、地方に関わらず上限を2倍とする。さらに地方に限り、企業を監督する「監理支援機関」も優良な場合、上限を3倍とすることも認める。
(毎日新聞 4月28日) 

 外国人労働者が地方から転出し、都市圏に転入する流れは日本人と変わらない。賃金水準が高く、就職先も多い都市圏への流れは止めようがないが、一定の縛りをかけないと外国人労働者の偏在が顕著になるだけでなく、事業者の間に不公平な事態が発生しかねない。
 外国人労働者問題に詳しい弁護士は次のように指摘する。
「地方から都市圏への転籍が進むと、都市圏の労働条件の良い事業者は国内で外国人材を確保できるので、海外から調達する必要がなくなる。育成就労制度では転籍先が転籍元に移籍金を払う規則が設けられるが、それでも海外から雇用するよりは、入国前8カ月の講習期間や就労1年間のコストを計算すれば安く済むだろう」
 地方の事業者は相応のコストをかけて採用し、育成したら都市圏の事業者に果実を持っていかれてしまう。制度に一定の縛りをかけないと歪な構図ができあがってしまうが、地方から都市圏に流れる動機にメスを入れれば、どうなるのか。それは賃金水準の引き上げである。
「外国人労働者の場合、日本人と違って、特定の地域で働くことのこだわりがない。労働条件が良ければ、どの地域にも移動する。都会で働きたいと希望する人も一定数いるだろうが、何よりも優先するのは労働条件、具体的には手取り額である」(同弁護士)

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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