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補正予算で処遇改善を 福祉懇談会で要請〈全社協〉

 全国社会福祉協議会は15日、灘尾ホール(東京都千代田区)で福祉懇談会を開催した。全国の社会福祉法人や社協の関係者、国会議員、中央省庁の幹部ら250人以上が参加。全産業平均と福祉分野で働く職員の賃金差が広がる中、現場からは早急な処遇改善などを要請した。
懇談会は例年この時期に、福祉関係者が国会議員に直接要望を伝える場として10年前から開催。開会にあたり村木厚子会長は「社会構造の変化が大きい中、共に生きる豊かな地域社会という変わらぬテーマを追い続けるのが福祉関係者に与えられた使命だ」と強調。「これまで以上に外の関係者とつながり、地域に必要な支援を新しく生み出したい」と決意を述べた。  
続けて、全国社会福祉法人経営者協議会の磯彰格会長が、2024年度における全産業の平均月収が38万6000円だったのに対し、介護は8万3000円、障害は7万8000円、保育は5万7000円低かったと説明。今後も格差は広がると危機感を示し、補正予算による早急な処遇改善と、全産業の賃上げに連動する報酬改定の仕組みを求めた。
(福祉新聞 10月19日)

医療従事者(医師と歯科医師を除く)の賃上げを目的に、2024年度診療報酬改定で外来・在宅ベースアップ評価料が新設された。外来・在宅ベースアップ評価料は(Ⅰ)と(Ⅱ)
に分類され、(Ⅰ)は外来医療または在宅医療を実施している医療機関が看護師や薬剤師などの医療関連職種の賃上げを行なっている場合、(Ⅱ)は(Ⅰ)を算定しても、職員の賃上げ率が1.2%に満たない医療機関が、さらなる賃上げを行なう場合に算定できる。
 厚生労働省によると、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、病院の約9割、診療所の約4割が届出を行なっている。ベースアップ評価料を届け出ていない理由で最も多いのは、病院の場合「届出内容が煩雑なため」だった。診療所の届出割合が4割にとどまっているのも同様の理由で、とくに個人経営の診療所にとって、届出作業は対応が困難だという。
 この実態を踏まえて、2026年度の診療報酬改定では届出の手続きが簡素化される可能性もある。
 医療関連職種の賃上げには高市早苗首相も高い問題意識を持ち、自民党総裁選の公約で賃上げを掲げていた。だが連立を組んだ日本維新の会が、若者の手取りを増やすために社会保障費の削減を主張し連理合意書に盛り込まれた。診療報酬の改定率は物価高騰を汲み取ってプラスになるだろうが、わずかな改定率にとどまるかもしれず、医療関連職種の賃上げ率が相変わらず全産業平均を下回る事態はじゅうぶんに想定できる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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