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社長就任2年後に後継者計画に着手 アサヒグループ小路会長

小路会長(筆者注・小路昭善アサヒグループホールディングス取締役会長兼取締役議長)が次を見越してサクセションプラン(後継者計画)に着手したのは早く、就任2年後の18年。7人の後継者候補をつくった。「有言実行を心掛け、上昇気流をつくった上で次代に引き継ごうと考えた」
伊藤座長(筆者注・伊藤邦夫一橋大学CFO教育研究センター長)はサクセションについて「考慮すべきは過去実績ではなく未来実績。過去の輝かしい記録ではなく、何かをやらせてみたい人材を選ぶべきではないか」との視点を示し、「経営者育成でベストプラクティス(最良の過去事例)が通用しない時代になった」と指摘する。
小路会長も「昨日成果を出した人が、明日も成果を出せる保証がある時代ではない」とうなずく。「未来は予想より早く来る。いかに先を読むかがカギ」。後継者選定の核となる人物、力量、実績のうち、力量では自身で体現した「決断力」と「実行力」を経営者の資質にあげつつ、さらに「先見力」を付け加えた。

(日本経済新聞 5月23日)

 経営トップの世代交代が進まない場合、要因のひとつに交代の基準が設定されていないことが挙げられる。老害批判も感情論に終始してしまうから、批判される側は悠然と居座れる。
 その点、アサヒグループホールディングスは、スッキリとした仕組みを設けている。CEO退任基準、代表取締役任命基準、役員在任上限基準を策定しているのだ。同社が明文化した「CEOスキルセット」(CEOとして必要かつ重要なスキルを明確化したもの)には、CEOについて「アサヒグループを代表する者として、誰よりもAGPについて考え、使命感と倫理観を体現するリーダー」「いかなる経営環境にあっても、社員を導く明確なビジョンを示し、揺るぎない価値基準を持つリーダー」「異なる考えを積極的に受容し、社員の能力の最大発揮を通じ、社員と会社の成長を実現するリーダー」と定義している。
 さらにCEOが備えるべき要素として、人物では「 誠実さ」「謙虚さ」「メンタルの強さ」「オープン・マインド」、力量では「先見力」「決断力」「実行力」「組織運営力」「学習能力」、実績では「RHQ(地域統括会社)または事業会社トップ経験 」「国際業務経験」「非連続成長課題の経験」。
 これだけの要素をすべて備えている人材が、アサヒグループホールディングスには在籍しているのだろう。だが中堅・中小のオーナー企業では、オーナーの存在が強すぎるために、後継者が育たないという事情がある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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