Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

清水建設の定年 来年から65歳に

 清水建設は2021年4月から全社員を対象に、定年を60歳から65歳に延長する。建設業界は若手を中心に人手不足が課題だ。経験豊富な人材を確保するとともに、従業員の働きがいにつなげる狙いもある。

現在は60歳で定年した後に、1年ごとに更新する契約社員として再雇用していた。21年4月以降に60歳を迎えた社員を対象に新たな定年制度を適用する。最長65歳まで正社員として雇用す る枠組みとし、退職時期は本人の希望で選べる。

 60歳を超えると年収は約3割下がるが、これまでの再雇用よりは上昇する。定年延長で人件費は年20憶~30億円増える見込みだが技術継承といったメリットを優先する。「若手社員のサポートなど、これまで培った専門性を発揮してもらいたい」(清水建設)

社員の待遇改善も進める。勤務地域を限定した社員を対象に、昇進の上限を21年度から副支店長級に引き上げる。これまでは課長級が上限だった。昇進の可能性を広げ、社員の働く意欲を高めたい考えだ。(日本経済新聞 10月6日)

定年退職以降も働き続ける背景には、生きがいの確保だけでなく、経済的理由という抜き差しならない問題が潜んでいる。

日本経済新聞社が住宅金融支援機構のデータを調べた結果、2020年度の利用者(約122万人)が完済を計画する年齢は平均73歳だった。20年間で5歳上がったという。しかも60歳時点のローン平均残高は、20年間で約700万円から1300万円超へと2倍近く増えた。

60歳を過ぎてもなお、これだけの負債を抱えていれば、処世観を問わず働かざるをえない。生きがいの追求どころではない。収入を失えば老後多産は必至だ。

現状では定年が延長されても、雇用される年齢は多くは70歳までだ。完済の平均年齢73歳までの3年間は、貯金と年金収入から賄うことになる。この現状を踏まえれば、年齢と借入額にもよるが、住宅ローンを借りた時点で、75歳まで働くことをライフプランに組み込んでおく必要がある。

再雇用が終了した65歳からどう稼ぐか、あるいは70歳からどう稼ぐか――ローンを抱えている会社員は定年延長制を利用するだけでなく、会社を離れて以降の稼ぎ方も計画しておかなければならない。

一方で、国も社会保障費の支え手確保に向けて、70~75歳までの雇用確保を講じなければならない。これまで以上に「人生100年時代」「生涯現役」をあらゆる場面で訴求していく。どう受け止めるかは人それぞれだが、70歳を過ぎて経済的の余裕のある人は、現役を意識せずにほどほどに働いているようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。