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正社員の人手不足は51.4% 旅館・ホテル、飲食店の高水準続く

4年ぶりに行動制限のない「夏シーズン」を迎え、人流の増加やインバウンド・レジャー
需要の活発化を背景に、国内景気は上昇傾向で推移している。そうしたなか、2023年6月
の有効求人倍率(季節調整値)は1.30倍となり、2022年8月以降は1.3倍台で推移し、高
止まりの状況が続いている。人手不足の解消に向けて、人材確保・生産性向上の両面で、
リスキリングを通じた既存従業員の育成やDX導入による業務効率化の対応が進められて
いるなか、企業の人手不足の状況について調査を実施した。
 2023年7月時点における全業種の従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員が「不足」と感じている企業は51.4%だった。前年同月比で3.7ポイント増加しており、7月としてはこれまで最も高かった2018年(50.9%)を上回り、過去最高を記録した。  
また、非正社員では30.5%で、7月としては5年ぶりに3割超の水準に上昇した。
 正社員の人手不足割合を業種別にみると、「情報サービス」が74.0%で最も高く、「旅館・ホテル」が72.6%で続き、上記2業種で7割を上回る結果となった。
(帝国データバンク 8月7日)

帝国データバンクが旅館・ホテル業界の約800社を調査したところ、2022年度の業況は
約6割の企業が増収基調だった。コロナ禍で訪日客も含めた旅行需要が消失した20~21年度に比べて大きく増加し、「全国旅行支援」中だった22年10月時点の45%も上回った。
コロナ禍で大幅に人員を削減した反動がいずれ起きることは予想していても、コロナ禍での業績悪化ではやむを得ない対策だった。
だが業績悪化で退職を強いられ業界が業績回復によって採用増に転じても、ふたたび業績が悪化すれば同じことが繰り返されるのではないのか。そう懸念して、よほど前職の業界に愛着をもつ人を除けば、勝手知ったる業界とはいえ、労働者の心理としては戻りたくないと思うだろう。
一方、コロナ禍で打撃を受けた外食業界も回復基調にある。日本フードサービス協会のよると6月の全体売上は前年比11.8%増、コロナ前の19年対比でも3.5%増となった。だが店舗数はいまだ19年レベルには回復していない 。
業態別にみると、ファーストフード業態の前年比11.2%増、19年対比では15.6%と好調だ。ファミリーレストラン業態は、全体売上は前年比11.8%増と好調だったが、19年比では6.1%減となった。
 低迷している業態はパブ・居酒屋で、19年比31.4%減コロナを境に事業基盤が大きく揺るがされたままだが、帝国データバンクは「コロナ 禍で繁華街やオフィス街の店舗閉鎖も多く見られるが、存続の店舗では大きめのグループ宴会が少しずつ戻る など、経営環境には明るい兆しも見え始めている」と分析する。
 外食業界で人手不足が本格化するのはこれからである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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