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「赤福」社長、51歳の息子から77歳の母に交代

akafuku

三重県伊勢市の老舗和菓子製造販売「赤福」は23日、同市内で臨時株主総会を開き、浜田典保(のりやす)社長(51)の退任を決めた。
その後の取締役会で、典保氏の母勝子(まさこ)氏(77)を新社長に選んだ。
父は元社長の益嗣(ますたね)氏(76)。2007年に発覚した消費期限偽装問題から業績を回復させた典保氏だが、関係者によると、経営方針を巡り益嗣氏と対立しており、事実上の解任劇となった。

 同社は非上場。関係者によると、赤福の発行済み株式は、益嗣氏が社長を務める「浜田総業」が約85%を保有し、残りを益嗣氏と典保氏でほぼ二分しているという。
益嗣氏は05年、典保氏に社長の座を譲り会長職に就いたが、消費期限偽装問題の責任を取り、07年に辞任した。

 典保氏は偽装問題で各方面への謝罪に追われたが、その後は経営手腕を発揮。
「家業から企業へ」を掲げて近代的な企業経営への転換を図り、民間信用調査会社によると、08年9月期に64億円だった売上高は、13年9月期に92億円を超えるまでになった。

 一方、益嗣氏は、現在の赤福の礎を築き、株式会社化後の初代社長も務めた祖母、故浜田ます氏(1886~1976年)の功績を重視。
関係者によると、勝子氏を中心に、自身に近い親族らによる「家業型」の経営スタイルに立ち戻ろうとしているという。
こうした方針の違いから2人の対立が深まっていたという。典保氏は新体制で代表権のない会長に退いた。
 
 今回の解任について、従業員からは、信頼の厚い勝子氏の社長就任を歓迎する声がある一方「いわれ無き解任」と典保氏を擁護する声もあるという。(毎日新聞 4月24日)

 解任劇の真相はわからないが、名門老舗に特有のさまざまなステークホルダーの利害が交錯した挙げ句の出来事なのだろう。
生涯現役社会とはいえ、社長が51歳から77歳に交代されたこの人事には、当然、次のシナリオが用意されているはずである。
組織にとって、内紛ほど抑止し難いものはない。
ひとたび火が点けば、従業員や顧客から不信感を抱かれ、メディアからは好奇の目を注がれることは百も承知だが、それでも鎮火できない。当事者たちの感情が収まるのを待つしか鎮火の手立てはないのだ。  

 この記事によると、家業型から企業型への脱皮が内紛の発端になったようだが、家業型は必ずしも脱皮すべきガバナンスではない。
中小企業の場合、創業家が求心力を発揮し続けているのなら、家業型のほうが社内政治の発生を回避できてよいとも言えるのだ。
企業型に転換するなら、持株会の発足など資本政策から着手しなければ実質がともなわない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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