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プルデンシャル 顧客を裏切る生保不正

人生の安心を支える保険事業を逸脱した許し難い背信である。
プルデンシャル生命保険の営業社員らが不正に顧客から金銭を受け取っていた問題で、金融庁は保険業法に基づいて保険の新規契約業務などを約3カ月間停止させる命令を出した。
 同社が公表した外部弁護士による調査報告書では、不正金額は約52億円に上り、1月の発表時から20億円余り膨んだ上、預かった金の詐取も多発していた。
 「売れればいい」と法令順守より収益を優先させ、不正をはびこらせた組織・風土の根は深い。病巣を絶つ改革ができるか。不祥事の相次ぐ保険業界自体にも、社会の厳しい目が向けられていよう。
 外部調査では、もうけ話を持ちかけて顧客から預かった金をだまし取ったり、不正に借りたりしていた。
 800人近い客から被害の申告があり、確認できた約52億円のうち約39億円を補償対象に認定。関与した営業社員計157人を処分し、解雇は64人という。
 報告書は、不正の背景として「個人の人脈に依存したビジネスが暴走した結果」と指弾した。
 営業社員は固定給がほぼない完全歩合制で、新規契約獲得を過度に評価する成果主義で競わせた。好成績者は広く裁量権が与えられ、外部の目が入りにくい「密室化」が、顧客の財産に手を付ける温床になったとする指摘は重い。
(京都新聞 10月15日)

保険は、将来の不安に備え、顧客が自分では管理しきれないリスクを託す事業である。その営業担当者が、顧客との信頼関係を利用して金銭をだまし取るなら、商品への不信にとどまらず、保険という仕組みの前提そのものを傷つける。
プルデンシャル生命保険の不正では、外部調査で確認された金額が約52億円に膨らみ、被害を申告した顧客は800人近くに上った。報告書が背景に挙げたのは、個人の人脈に依存する営業と、固定給がほぼない完全歩合制、新規契約を過度に評価する成果主義である。 
好成績者に広い裁量を与え、外部の目が届きにくい環境をつくったのなら、不正は個人の倫理だけでは説明できない。顧客との親密さが営業上の資産となる一方、その関係を監督する仕組みが弱ければ、信頼は不正の隠れみのにもなりうる。
金融庁の業務停止命令や関与した社員の処分は必要だ。しかし、処分だけで組織の病巣が絶たれるわけではない。契約獲得を競わせる評価制度を見直し、顧客から預かった金銭や投資話を持ちかける行為を独立して点検し、成績上位者にも例外なく監督の目を向ける必要がある。
成果を上げる社員ほど裁量が広がる仕組みは、成果と規律を切り離しかねない。経営の責任は、ここにある。
保険営業の価値は、契約を取る力だけで測れない。顧客が人生の不確実さを託せる関係を守ることまで含めて、初めて成果と呼べる。信頼を収益の手段として消費する組織は、いずれみずからの事業基盤を失う。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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