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「バス運転手は稼げない」は過去の話?ウィラーが年収600万円を実現

「バス運転手」と聞いて、「きついわりに、稼げない」というイメージを抱く人は少なくないだろう。実際、バス運転手の平均年収は約453万円(厚生労働省「2025年 賃金構造基本統計調査」)にとどまり、決して高収入とはいえない。地方によっては300万円台にとどまるなど、さらに低い場合もある。
 一方で、ブルーカラー分野の職種では近年、賃金の上昇が続いている。建設業では、作業員の人件費の目安となる単価が14年連続で上がった。タクシー運転者も2025年の賃金構造基本統計調査で平均年収が前年から8.7%増え、全産業平均の伸び(3.5%)を上回った。  
こうした賃上げは一律ではなく、職種によって差がある。同じドライバー職でも、バス運転手はこの波に乗り切れていない。処遇が見劣りするため、若い担い手は集まらず、運転手の高齢化と減少が進む。担い手不足は、いまや業界全体の課題だ。  
そんな中、大卒をはじめとする若手の採用で成果を上げる企業がある。高速バス「WILLER EXPRESS」を運行するウィラーエクスプレス(東京都江東区)だ。同社のバス運転手の平均年収は600万円台で、業界平均を大きく上回る。未経験で入社した若手でも経験を積めば手が届き、年収が高い人では700万円台に達するという。
(ITmedia ビジネスオンライン 8月8日)

バス運転手が足りないと言われる。だが、この言葉には奇妙な倒錯がある。人が不足しているのではない。その仕事をする人に、社会が相応しい対価を支払ってこなかったのである。
2025年の平均年収は約453万円。地方では300万円台にとどまることもある。一方、タクシー運転者は前年比8.7%の賃金上昇を記録し、建設業の人件費単価も14年連続で上がった。同じ「運転する仕事」でありながら、バス運転手だけが取り残されている。
これは市場の失敗というよりも、社会の価値判断の失敗ではないか。バス運転手は乗客の生命を預かり、時刻を守り、道路上の危険を瞬時に判断する。しかも地方では、その仕事が失われれば、高齢者や学生の日常そのものが失われる。それほど重要な労働が、長い間「公共交通だから安くて当然」という論理の中に閉じ込められてきた。
ところがWILLER EXPRESSでは、平均年収が600万円台に達し、若い未経験者も経験を積めば700万円台を得ることができる。人がいないのではない。人を必要とするなら、人にふさわしい値段を払えばよいのである。
企業が人を安く使うことを合理性と呼んできた時代は終わりつつある。人の価値を低く見積もった組織から、人のほうが先に退出する。バス運転手不足とは、労働力の不足ではない。運転手の労働を安く評価してきた社会そのものへの、無言の回答なのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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