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2025年度「役員報酬1億円以上」 過去最多の1345人

2025年度(2025年4月期-2026年3月期)に役員報酬1億円以上を開示した上場企業は606社(前年度540社)で、人数は1345人(同1207人)だった。社数、人数ともに過去最多を更新した。  
1345人の報酬額(退職金、株式報酬、ストックオプションなどを除く基本報酬+賞与)と、従業員の平均年間給与を比較すると、最大の格差はトヨタ自動車・豊田章男会長の報酬額10億1600万円に対して、従業員の平均給与は1006万円と、100.9倍(前年度101.3倍)の差があった。  
役員報酬額と従業員の平均給与の差は、中央値9.7倍(同10.6倍)、平均値12.7倍(同13.4倍)で、上場企業では役員と従業員の給与格差はやや縮小するが、それでも10倍前後の大きな格差があった。  
役員報酬額トップは7&iHDのジョセフ・マイケル・デピント元取締役で、歴代最高の134億1,700万円(同43億4,900万円)。2位はソフトバンクGのレネ・ハース取締役の61億3,900万円(同49億400万円)、3位はキオクシアHDのステイシー・スミス会長の44億3,100万円(同2億9,600万円)。    
企業別の開示人数では、最多は日立製作所(東証プライム)が34人(前年度31人)で、同社が2023年度に開示した過去最多に並んだ。トップ10(12社)は、電機と金融が各4社入った。
(東京商工リサーチ 7月30日)

数字の増大は、企業社会の繁栄を示す指標として語られやすい。だが、606社、1345人という数字を眺めていると、別の風景が見えてくる。そこにあるのは、企業という巨大な共同体の内部で、富の配分原理が変質している姿である。
役員報酬と従業員給与の格差が中央値で9.7倍、最大では100.9倍に達する。しかも、この差はたんなる能力や責任の差だけでは説明できない。企業が生み出した価値を誰に帰属させるのかという、資本主義そのものの問題が横たわっている。
とりわけ134億1700万円という報酬額には、もはや個人の生活を豊かにするという尺度は当てはまらない。それは企業経営という公共性を帯びた営為が、いつの間にか「いくらまでなら人間に値札を付けられるか」という市場の論理に包摂されたことを示している。
企業は人間に値札を付ける市場へと変質したのである。
かつて企業は、従業員をたんなる労働力としてではなく、共同体の一員として遇することによって社会的な正当性を得ていた。今日、その共同体という言葉が薄れ、経営者には世界市場の報酬体系、従業員には生産性と自己責任が語られる。領主と使用人の関係に近く、中世に舞い戻ったイメージすら想起させる。
企業が富を生む場所であるなら、富の配分に倫理が必要だ。役員報酬の史上最高額という「成功」の記録は、同時に、企業が人間を結びつける場所から、人間の価値を序列化する場所へ変わりつつあることの記録でもある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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