2026/07/22

政府は自衛官の確保につなげるため、退職した自衛官の支援を担う「庁」の新設を検討する。政府が7月中に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込む。米国の「退役軍人省」を参考にし、再就職支援や負傷した自衛官への対応などを一元的に担う組織を目指す。
骨太の方針には「退職自衛隊員・家族への支援について、新たな庁の設置を含め取り組みの強化を検討する」と明記する。新たな庁の名称は「退職自衛隊員・家族支援庁」とする方針だ。
退職自衛官の支援を巡っては、防衛省が6月17日に検討委員会を設置し、小泉進次郎防衛相が施策の検討を指示していた。
小泉氏は26日の記者会見で「自衛隊員の職業を選択し続けてもらうためには、現職の自衛隊員の処遇改善はもちろん、退職した自衛隊員や家族も誇りを持って、胸を張って人生を全うできる環境を構築することが必要だ」と述べていた。
(毎日新聞 7月10日)
自衛官不足は、給与や手当だけでは解決しない。政府が「退職自衛隊員・家族支援庁」の新設を検討する背景には、国家が自衛官に示してきた「出口戦略」の貧しさがある。制服を脱いだ瞬間に支援が細切れとなる制度では、若者は自らの人生設計を託そうとはしない。組織は入る時より、去る時の姿で評価されるのである。
この発想は米国の退役軍人省を意識している。同省は約40万人規模の職員を擁し、医療、障害補償、教育支援、住宅融資、就職支援まで包括的な制度を整備している。退役後の生活保障を国家の責務として制度化した結果、軍務が一時的な犠牲ではなく、ひとつの職業人生として社会に受け止められる土壌を築いてきた。
一方、日本では防衛省の再就職支援はあるものの、医療、福祉、家族支援は複数省庁に分散し、当事者が制度を渡り歩かなければならない。令和6年版防衛白書によれば、自衛官の充足率は9割を下回る水準が続き、少子化の進行で人材確保はさらに困難になると見込まれる。
しかし、新庁の設置だけで問題が解決するわけでもない。行政組織は看板を掛け替えれば機能するほど単純ではない。実効性を左右するのは、十分な予算と権限、医療・福祉・雇用を横断する制度設計である。理念だけが先行すれば、新たな縦割り行政を生む危険すらある。
国家とは、危険を引き受けた人間を、任務の最中だけではなく、その後の人生まで支える覚悟を持つ共同体である。その覚悟が制度として可視化された時、自衛官という職業は初めて「国に尽くしてよかった」と静かに胸を張れる仕事になる。
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