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採用充足の鍵は選考フローの「質」と「個別対応」にあり

リクルートマネジメントソリューションズは、企業における新卒採用の実態と課題を明らかにすることを目的に、2026年卒採用を対象として「新卒採用選考プロセスとフォローについての実態調査」を実施した。
 近年、応募者数の不足や採用予定人数の未充足、人事担当者の業務負担増大といった課題が顕在化する中、各企業はインターンシップの導入や選考プロセスの見直し、内定者フォローの強化など、さまざまな取り組みを進めている。
 調査の結果、採用充足は企業規模や施策の実施数だけで決まるものではなく、選考プロセスやフォロー施策の「質」と「個別対応」、そして戦略的なリソース配分と継続的な改善が重要であることが示唆された。具体的には、アトラクト(応募者の惹きつけ・志望度向上)施策では実施の有無よりも内容の質が充足に影響すること、内定者フォローでは人事やリクルーターによる個別面談を実施する企業ほど充足している傾向が確認された。
また、充足している企業は選考プロセスを構成する要素ごとに振り返りを実施していることもわかった。
(リクルートマネジメントソリューションズ作成ニュースリリースを要約 5月14日)

かつて企業は「知名度」と「大量募集」という磁場によって学生を引き寄せることができた。しかしリクルートマネジメントソリューションズの調査が示したのは、その磁場の衰弱である。充足率を左右するのは企業規模でも施策数でもない。むしろ「どれだけ学生一人ひとりに触れたか」という、きわめて人間的な密度であった。
興味深いのは、アトラクト施策において「実施した」という事実より、「何を語ったか」が結果を分けている点だ。学生はもはや、説明会の照明の中で語られる抽象的な理念には反応しない。SNSによって企業内部の空気まで可視化された時代、彼らは企業の言葉を真に受けず、沈黙や温度差を嗅ぎ取っている。形式だけのインターンシップが効力を失うのは当然である。
さらに内定者フォローで、個別面談を行なう企業ほど充足しているという結果は示唆的だ。人口減少社会では、採用とは「集団管理」ではなく「関係形成」へと変質する。一括採用の論理は、工業社会の大量生産モデルの残像にすぎない。いま企業に求められているのは、学生を選別する能力ではなく、不安を引き受ける能力だ。
リクルートマネジメントソリューションズ測定技術研究所の渡辺かおりマネージャーは
「限られたリソースのなかで、どの場面で評価の精度を高め、どの場面で人が関わる価値を発揮するのかを整理し、選考やフォロー全体を見直していくことが重要になる」と指摘する。
採用の充足した企業が選考プロセスを細かく振り返っている点にも、本質がある。採用を単年度の作業としてではなく、組織の思想を映す鏡として捉えているのである。人手不足とは、たんに労働人口の問題ではない。企業が「選ばれる理由」を失いつつあるという、より深い危機の別名なのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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