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いすゞ社長、日産・追浜従業員採用に意欲「高技能職ありがたい」

いすゞ自動車の山口真宏社長は13日の決算会見で、2028年3月で車両生産を終了する日産自動車の追浜工場(神奈⁠川県横須賀市)で働く従業員について、いすゞで前向きに採用したいとの考えを明らかにした。
山口社長は、同じ神奈川県を拠点とする企業として「日産の優秀な技能職の方をわれわれとして活用させていただけるのであれば、むしろありがたい」と述べ、追浜工場の従業員を対象とした「求人について話をしていることは事実」と述べた。採用人員規模については控えた。
いすゞでは現場のオペレーションを担う人材の確保が難しく、これまでも海外実習生を活用してきたという。山口社⁠長は、正社員としてスキルの高い人材を採用する機会があり、「希望される方は当社で受け入れて⁠働いていただけると、むしろありがたい」と語った。
日産の追浜工場では約2400人が働いている。同工場での車両生産は日産自動車九州(福岡県苅田町)⁠へ移管・統合する予定で、1000人規模の追⁠加人員が求められている。日産は追浜工場の従業員に⁠対し、九州工場への原則、転籍を打診しているが、さまざ⁠まな事情で九州への転勤が難しい従業員もおり、追浜工場近隣での雇用先を確保する必要があった。
(ロイター 5月13日)

産業の地殻変動は、多くの場合、株価の変動や決算数字として最初に可視化される。しかし本当の震源は、工場の床に立ち、黙々と部品を組み上げてきた人間の手の中にある。
日産追浜工場の閉鎖決定は、たんなる生産拠点の統廃合ではない。神奈川という地に根を張り、数十年にわたって蓄積されてきた技能の共同体が解体の危機に瀕するという、きわめて深刻な文化的損失でもある。約2400人という数字は、統計上の労働力ではなく、それぞれに固有の熟練と生活史を持つ人間の総体だ。
この文脈において、いすゞ自動車の山口社長の発言が持つ意味は重い。「ありがたい」という謙虚な表現の背後には、現場の技能職確保という切実な経営課題が透けて見える。実際、いすゞはこれまで海外実習生に依存せざるを得なかった。熟練した国内技能職の慢性的な不足は、日本の製造業全体が直面する構造的な欠陥である。
注目すべきは地理的な必然性だ。同じ神奈川を拠点とする両社の間で生まれたこの対話は、産業全体の人的資本を地域内で循環させるという、きわめて合理的な知恵の実践に他ならない。九州転籍という選択肢を、家族の事情ゆえに選べない従業員にとって、隣接地域での雇用継続は、生活の連続性を守る唯一の道でもある。
技能とは、機械では代替し得ない、人間の時間そのものの結晶である。その遺産を地域の中で継承しようとする試みに、製造業再生の確かな糸筋が見える。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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